海水からDNA、魚類291種を検出「捕獲調査より効率的」 美ら海財団など調査


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 【本部】沖縄美ら島財団総合研究センター(本部町)、千葉県立中央博物館、兵庫県立大学の研究チームは23日、海水に含まれる魚類のDNAから魚種を検出する独自の新手法「メタバーコーディング法(環境DNA、多種同時検出法)」で、沖縄県本部町備瀬の礁池(イノー)を調査し、スズメダイなど計291種の魚類を検出したと発表した。同センターは「従来の捕獲・観察による調査方法と比較し、はるかに効率的な手法だ。この手法で琉球列島のサンゴ礁域での生物多様性研究が進み、保全に役立つことが期待される」としている。

海水に溶け出したDNAから魚類を検出する「メタバーコーディング法」のイメージ(沖縄美ら島財団提供)

 これまでは実際に生物を捕獲、または観察するといった手法によってイノー周辺の魚類を研究してきたが、研究者の高度な技術と知識、多大な時間と費用を要することから、琉球列島のサンゴ礁域での生物多様性研究は思うように進んでいない状況にあったという。研究チームは2019年5月8日の満潮時に備瀬地区イノー内11ケ所でそれぞれ1リットルずつ海水を採取し、海水に溶け出している海洋生物の体液やふんからDNAを分析するメタバーコーディングの中でも、より精度の高い「MiFish法」を用いて調査した。その結果、過去3年間に計16回実施した従来の魚類の捕獲・観察調査で確認できた217種を上回る計291種の魚類の検出に成功したという。

 一方、従来法で確認できたにもかかわらず、メタバーコーディング法で検出できなかった魚類が100種以上あった。そのため検出データをより詳しく解析するなど、検討を加えたところ、最大で約410種の魚類が生息していることが推測できるとした。

 研究センターの岡慎一郎主任研究員は「海水が混ざらないよう注意すれば、いろいろな所で一度に調査ができる。さらに技術が発展すれば、琉球列島のサンゴ礁域の生物多様性の研究は格段に進む可能性がある」と述べた。