【記者解説】県警「米軍から協力得た」のに被疑者不詳…地位協定の壁またも 高江ヘリ炎上


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 公訴時効が目前に迫った東村高江の米軍ヘリ不時着炎上事故。県警は25日、航空危険行為処罰法違反(業務上過失航空危険)の容疑で被疑者不詳のまま書類送検した。県警は「米軍などから必要な協力は得られた」とし、捜査への影響を否定する。だが、民間地で発生した航空機事故という重大事案の原因は特定されず、日米地位協定の壁がまたも立ちふさがった。

 県警は米軍に対する捜査協力要請について中身を明らかにしていない。捜査関係者によると、米軍側からは過失があった可能性がある操縦士や整備士などの詳細な証言内容の説明はないという。防衛省が発表した調査報告書では、飛行中にエンジン部分で火災が発生したとされているが、火災の明確な発生原因は判明していない。米側の再発防止策の詳細な内容も明らかにされていない。日米地位協定では、米軍機事故の捜査には米側の同意が必要とされており、県警から直接、米軍関係者への事情聴取などはできなかった。

 県警幹部は「米軍事案以外でも県警独自で捜査するわけではない」とし「消防などの外部機関の調査でも原因不明で被疑者不詳で終結する事件事故はある」と説明する。

 しかし、沖縄の日本復帰以降、民間地での米軍機事故は後を絶たず、その度に県警は被疑者や機長の氏名不詳で書類送検するなど、事故原因の特定に至らない状況が続いている。繰り返される米軍機事故をどう防ぐのか。日本側の捜査権を行使するための日米地位協定改定が改めて求められている。

(当間詩朗)