鹿児島銀行が沖縄進出5年 事業性融資を拡大 低金利武器に実績 「徐々になじむ」戦略〈経済アングル2020〉


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沖縄に進出して28日で5年となった鹿児島銀行の沖縄支店=28日、那覇市久茂地

 2015年に鹿児島銀行(松山澄寛頭取)が県外の地方銀行として初めて沖縄に進出して、28日で5年がたった。当初は個人向けの住宅ローンを中心に融資額を増やしてきたが、直近では事業性融資への積極的な営業展開を見せ、県内地銀を上回るペースで融資を拡大する。20年3月に県内での貸出金残高は1千億円を突破した。金融関係者は「住宅ローンから事業を展開し始め、沖縄で徐々になじんでいく戦略をとっている」との見方を示す。

 同行は15年9月に那覇市銘苅に沖縄支店を開設した。18年に市久茂地に2店舗目の店舗を構え、久茂地を沖縄支店、銘苅を新都心支店として2店舗体制となった。店舗拡大に伴って人員も拡充した。20年3月時点で約60人が県内で営業を担当している。

 ■営業基盤の強化

 沖縄進出と同じ年に鹿銀と肥後銀行(熊本県)が経営統合し、九州フィナンシャルグループ(FG)が誕生。九州FGは貸し出し増強の柱として「北部九州、沖縄、主要都市部(東京・大阪)における取引先の裾野拡大」を掲げている。

 こうした方針に基づき、鹿銀は進出から5年で、沖縄県内での営業基盤を着々と整えてきた。

 九州FGの資料によると、県内における鹿銀の貸出金残高(末残)は18年3月に310億円だったが、20年3月期は1032億円に上り、2年間で3・3倍(722億円増)の規模に拡大した。

 特に20年3月期の1年間で、鹿銀の県内での貸出金は428億円増加している。

 期末残高ベースで見ると、同期間に琉球銀行は249億円増、沖縄銀行は206億円増、沖縄海邦銀行は226億円増で推移している。

 好調な県経済を背景に県内地銀3行とも融資を増加させているとはいえ、貸出金の増加額、増加率ともに鹿銀が地銀3行を上回っていた。

 ■目標1300億円

 融資が増加している背景には鹿銀の貸出金利の低さがある。

 20年3月期決算によると鹿銀の貸出金利は1・04%だったのに対し、琉銀は1・54%、沖銀は1・52%、海銀は1・94%だった。地銀3行の貸出金利も低下傾向が続くが、いまだ鹿銀と開きがある。

 東京商工リサーチ沖縄支店の調査によると、鹿銀と取引のある県内企業は、大手建築業者やホテル、チェーン展開する飲食店なども含まれ、幅広い業種の中堅企業と取引が増えてきている。

 同支店は「県内で名の通る企業との取引も多くなっている。資金力があるので、低金利を武器に県内企業への融資実績を積み重ねているのではないか」と分析した。

 昨年12月の時点で、九州FGは2020年度に沖縄県内での貸出金の規模を1300億円台にするとの目標を掲げていた。目標達成に向けて貸出金の増加に取り組んでいると見られるが、新型コロナウイルスの影響で本年度に入って見通しを明らかにしていない。

 ある県内地銀関係者は「金利や資金力の面では鹿銀に及ばないが、地銀ならではのきめ細やかな対応で新規顧客を獲得していくしかない」と語った。

(池田哲平)