沖縄県産卵が「究極のTKG」に 香港、シンガポールで好調 「たまご園」が輸出


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
たまご園が提供する「TKG(卵かけご飯)」。白身のメレンゲに卵黄を乗せ、アボカドや海鮮のトッピングで華やかに仕上げた

 シンガポールを拠点に沖縄物産を取り扱うENグループ(ピーター・ン社長)が運営する卵料理の専門店「たまご園」が、香港とシンガポールで好調だ。香港に2店舗、シンガポールに4店舗を構え、本年度中にさらに6店舗増やす計画もある。海外でなじみのない生卵の食文化を広めようと、琉球飼料(崎濱秀敏社長)と開発したオリジナル鶏卵を輸出し、現地に合った卵かけご飯を提供している。

 ENグループは2019年6月に、「たまご園」の1号店をシンガポールで開店。出店に向け琉球飼料と開発した鶏卵は、独自の配合飼料で、うまみとコクを特徴に仕上げた。店頭での主力メニューの一つ「究極のTKG(卵かけご飯)」は、白身をメレンゲにし、独特のヌルッとした食感を取り除いた。アボカドや海鮮をトッピングし、見た目も華やかだ。

 店舗を構える香港とシンガポールは食糧輸入国で、日本産の食材は安全面から人気が高い。県内農作物の主要輸出地域でもある。ENグループは19年度に、香港とシンガポールに合わせて41・9トンの鶏卵を輸出。20年度の輸出量は8月末までに83トンと順調に伸ばしている。

 県畜産振興公社によると、県内の鶏卵輸出実績は18年度の66・4トンに対して19年度は133・1トンと2倍になっており、「たまご園」の新規出店も輸出増を後押ししている。

香港にある「たまご園」。卵をモチーフにしたポップで明るい雰囲気が特徴(ENグループ提供)

 鶏卵は市場を通さず供給できるため、相場に左右されず、生産者にとって安定的な販路や収入の確保につながった。琉球飼料の當山全隆取締役営業部長は「新型コロナで市場動向が不透明な中、ENグループの安定した海外市場とのつながりは心強い」と評価する。

 沖縄の地理的優位性も、県産鶏卵のセールスポイントだ。鶏卵は通常、単価が安いため船便で大量に輸送される。沖縄は飛行機の直行便があることや、船便でも輸送時間がかからないことで、他の国産卵に比べてより新鮮な状態で鶏卵を提供できる。

 ただ新型コロナの影響で航空直行便が運休するなど、物流は不安定だ。ENグループの担当者は「物流や物量が制限されることは大きな機会損失だが、柔軟に対応することが今できる対策だ」と話す。本年度に香港とシンガポール向けに330トンを輸出する計画だ。ン社長は「生産者と生産体制や品質管理体制を強化し、実現させたい」と意気込んだ。 (石井恵理菜)