<玉城県政2年>基地問題「対話解決」結果出ず 識者は「大胆なカード」期待


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前泊博盛氏

 玉城デニー知事の就任から4日で2年を迎えた。「新時代沖縄」「誰一人取り残すことのない沖縄らしい優しい社会」などを掲げて、県政運営に取り組んできた玉城知事。米軍基地問題をはじめ、子どもの貧困、経済振興、医療分野の各種施策の進捗(しんちょく)を識者の指摘を通して点検する。

 名護市辺野古の新基地建設阻止を掲げて当選した玉城デニー知事は、工事を強行する政府に対して法廷闘争を続けながら、一貫して対話による解決を訴えている。だが政府は工事を続け、軟弱地盤の改良工事を組み込む設計変更に踏み切った。その間も米軍普天間飛行場は使われ続け、危険性除去は実現していない。玉城知事は県外の講演活動やイベント出演などを通じて全国世論を味方に付けようとしている。

 米軍基地の整理縮小に向け、有識者を集めて万国津梁(しんりょう)会議を設置した。3月、米軍普天間飛行場の県外への移転・分散が可能だとする提言を受けた。提言書を活用して政府に新基地断念を求める方針だ。

 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の返還を巡っては、翁長雄志前知事の姿勢を踏襲する形で浦添市側への軍港移設を認めている。今年に入って議論が加速し、県政与党内の根強い反対論や辺野古新基地建設反対との整合性を問う声などに向き合わざるを得なくなった。

 ■「対話以外の方策、検討を」前泊博盛・沖国大教授

 辺野古新基地建設阻止について玉城デニー知事は政府との話し合いで解決したいと主張しているが、聞く耳を持たない相手に対して対話戦略は奏功していない。別の方策を考える必要がある。

 努力している一方、結果は出ておらず膠着(こうちゃく)状態に陥って埋め立てが進んでいる。後半2年に期待する75点だ。

 玉城知事自身が日米安全保障体制を認める保守の立場で、交渉カードの限界が露呈した。取り組んでいる印象はあるが、結果は何も生んでいない。大胆な解決策を打ち出すべき時だ。

 過去に大田昌秀知事は革新が持っていたカードとして基地の全廃計画を打ち出した。「全部を失うよりは」と当時の橋本龍太郎首相から11施設の返還合意を引き出した。

 玉城知事の後半2年には、政府に聞く耳を持たせることができるような新機軸を期待したい。

 那覇港湾施設(那覇軍港)については論点を整理して議論する必要がある。県政の「アキレス腱(けん)」になる恐れがあるので要注意だ。翁長前県政の遺言のような日米地位協定の改定案を活用し、改定に向けた機運を盛り上げる工夫が求められる。

 本人の柔らかいパーソナリティーはいい面だ。本土との対立ムードを和らげている。フジロックフェスティバルへの出演など個性が光る。全世代に対して持っている発信力は、さまざまな分野で生かしてほしい。 (安全保障論)