短距離国内トップクラスの与那原 マスターズへ参戦 「陸上の人気高めたい」


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国体選考会の男子100メートル決勝 躍動感のある走りで10秒55を記録した与那原良貴(左)=9月13日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアム

 陸上短距離の国内トップクラスで戦い続ける与那原良貴(24)=那覇西高―東洋大出、アスリート工房所属=が、マスターズ陸上への参戦を始めた。
 9月13日の国体選考会男子成年100メートルで記録した10秒55はM―24(18~24歳)の従来の日本記録を上回っており、今後、日本マスターズ陸上競技連合から、新記録として認められる見込みだ。主要大会に出続ける現役選手のマスターズ参戦は珍しい。

 幅広い年代が参加するマスターズを盛り上げることで「陸上の人気を底上げし、選手の裾野を広げたい」と狙いを語る。

 男子100メートルの桐生祥秀らを輩出した短距離の名門東洋大陸上競技部で主将を務めるなど、全国トップで戦ってきた。近年、国内の陸上は100メートルを中心に注目を集めるが、会場は閑散とすることも多く「野球などに比べて人気が低く、スポンサーも付きづらい。選手の価値をブランド化できていない」と感じるという。「人気の低下で競技人口が減ればレベルも衰退する」と危機感を語る。

「マスターズ陸上を盛り上げることで競技人気を高めたい」と語る与那原良貴=9月15日、浦添市のANA FIELD浦添

 競技を盛り上げる一助になればと目を付けたのが、18歳以上は誰でも参加できるマスターズだ。5歳ごとにクラス分けされ、年齢の上限はM105+(男子105歳以上)まである。陸上は20代で現役を引退し、その後は続ける人が少ないというが「カテゴリ別で日本記録を塗り替えて注目を集めることで、競技人気を高めたい。マラソンのように多くの年代が親しむようになればいい」と展望する。

 昨年のアジア選手権で男子100メートル元日本記録保持者の朝原宣治らとM45(40~45歳)400メートルリレーの世界新記録を樹立するなど、日本のマスターズ陸上を長年けん引してきたアスリート工房の譜久里武代表(49)も「マスターズは世界的にブームになっているけど、日本は近年ようやく生涯スポーツとして人気が出てきている。良貴のように若いスターが育ち、一緒に盛り上げてくれるのは素晴らしいこと」と後継の誕生を歓迎する。

 一選手としてのレベル向上にも余念がない与那原。9月13日の国体選考会で10秒50を切っていれば、10月の日本選手権の標準記録を突破していただけに「(10秒50は)出るコンディションだった」と悔しさをにじませる。自己ベストは10秒43だが「もっといける」と自らを鼓舞する。

 大学卒業後、友睦物流を経て、今年2月からアスリート工房に所属する。週5~6日は陸上教室で子どもたちを指導し、独自大会の開催などにも尽力する。「自分ができることは限られているけど、行動に移さないと何も変わらない。スピード感を持って、いろいろな取り組みをやっていきたい」と挑戦を続ける。 

(長嶺真輝)