「私悪いの?」持続化給付金の二重申請 代行で手続き、20代女性が証言 沖縄


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100万円をすでに受給し、新たに持続化給付金の二重申請をしたと語る20代女性=10月、那覇市

 新型コロナウイルス対策で個人事業主に最大100万円を支給する国の持続化給付金を巡り、新規の確定申告を2度行い、持続化給付金を2度申請する二重申請の事例があることが8日までに関係者への取材で分かった。代行者に依頼し、給付金を二重申請した沖縄県那覇市の20代女性は「また100万円がもらえるならいいなと、軽い気持ちだった」と悪びれる様子はない。すでに女性は1度、100万円を受給した。2度目の申請分の振り込みは確認されていない。

 「給付金は国が判断して私に支給した。なんで私が悪くなるの?」。キャバクラ店などに勤める那覇市の20代女性は話した。不正受給に関する報道などは、これまでほとんど耳にしていない。女性は6月に、会員制交流サイト(SNS)で持続化給付金の申請を呼び掛けられた。代行者とSNS上でやりとりし、数週間後に100万円が振り込まれ手数料は20万円だった。

 9月には仕事で知り合った県内の男性から、新たに持続化給付金の申請を持ち掛けられた。1度受給したことを男性に告げず、申請を承諾した。数日後、女性のSNSに、認め印と税務署の収受印が押された確定申告書の写真が送られてきた。女性と男性のSNSのやりとりには「職業を顧客紹介業とする」「開業日は2019年2月」など、虚偽の申請内容に関する書き込みが残っている。

 男性とは通帳と免許証のコピーを渡す際に1度会ったきり。手続きは全て男性任せだった。「勝手に全部やってくれるって話だったから承諾した。駄目なら駄目でいいと思った」と言い切る。虚偽申請や二重申請という不正に関与した自覚はないという。女性は給付金の申請時に発行されるIDとパスワードを男性から知らされておらず、状況確認や申請の取り消しはできない状態だ。100万円を受給した場合、男性に50万円を支払う約束になっているが7日現在、女性の口座に新たな給付金の振り込みはない。

 確定申告を取り扱う沖縄国税事務所は「(2度の確定申告は)常識的には考えられない。第三者が申告者を装い虚偽の確定申告を行ったとすれば、税理士法に抵触する恐れもある」と強調する。

 同事務所の広報官は「窓口では書類に不備がなく、適正であれば確定申告は受け付ける。その後、審査を経て問題があれば申告は留保される。今回のケースは審査期間に給付金の申請を行おうと考えたのではないか」と指摘する。確定申告の代行は税理士の専任業務に当たるといい「申告者本人以外の第三者が、確定申告書を作成すれば法に触れる恐れがある」と訴えた。

 県警は横行する不正受給の問題に対し、詐欺などの犯罪行為があれば厳正に対処するとしている。不正受給を呼び掛ける代行者らの背後に反社会勢力の関与があるとみて、関係者に話を聞くなど捜査を進めている。 

(高辻浩之)