首里石鹸がコロナ禍でも積極出店できるワケ


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積極出店している首里石鹸の商品

 新型コロナウイルスの影響で観光客が激減した那覇市の国際通り。臨時休業を続ける店も多い。そんな中、県産植物由来のオーガニックせっけんなどを販売する「SuiSavon―首里石鹸(せっけん)―」が積極的に新規出店している。7月に牧志と久茂地に2店舗オープンし、国際通りだけで現在5店舗、全県で12店舗を展開する。12月初旬にはサンエー那覇メインプレイスにも出店を予定している。観光みやげ品の印象が強いブランドが、観光客が減少する中で積極展開できるのは、これまで地道に行ってきた地元向けの商品開発とオンラインショップに支えられているからだ。

おみやげから進化

石鹸やパックなど多くのアイテムを展開している首里石鹸を運営するコーカスの緒方教介社長=9月29日、那覇市牧志の首里石鹸greenギャラリーショップ

 化粧水、泥パックにもなるクレンジング、美容液、ボディーソープ、シャンプーなど「首里石鹸」の店内には数多くのアイテムが並ぶ。店名の通り、せっけんのイメージが強いブランドだが、店頭の品ぞろえを見るとそのイメージは覆される。

 変化のきっかけは2018年の那覇オーパへの出店だった。当時の首里石鹸で県民が買うのは、せっけんやハンドクリームといったギフト向け商品しかなかった。県内客に毎月来店してもらうために、化粧水など自分使いする商品の開発に着手した。

 スキンケア商品は最初は全く売れなかったが、価格や売り方の見直しを重ね、徐々に消費者から認知されるように。19年6月のサンエー浦添西海岸パルコシティ出店後は、さらに商品開発を加速させた。同店は県民のリピート率が高く、コロナ禍でも売り上げの減少幅はごくわずかだ。

 運営するコーカスの緒方教介社長は「オーパは売り上げが立たず約1年で撤退したが、あそこでの経験は大きかった」と振り返る。

ファン作り

 16年の開業以来、右肩上がりで売り上げを伸ばしてきたが、新型コロナの影響からは逃れられなかった。4月は全店舗が休業を余儀なくされ、再開後も観光客が戻っていないため、4~9月の店舗の売り上げは前年同期の5割にとどまる。この店舗の落ち込みを補っているのがオンラインショップだ。4~9月の売り上げは前年同期の3・4倍で、店舗売り上げの半分を超える。

 店舗購入客のオンラインへの誘導も強化した。店頭で購入した客には会員登録を促している。会員にはほぼ毎日、無料通信アプリ「ライン」やメルマガでメッセージが届く。それは商品の紹介だけではなく、沖縄の日々の暮らしや、自然の美しさなどをつづった文章で、物だけでは伝えられない首里石鹸の世界観を伝えている。「おみやげやギフトを接点に首里石鹸を知った方とのコミュニケーションを絶やさないことが、オンラインでの購入にもつながっている」と緒方社長は分析する。

 今は新型コロナで客足が減少している国際通りだが、コロナが収束すれば観光は戻り、一つの通りに複数の店舗があることで店の認知度が高まることなどから、コロナ禍でも出店した。楽観視できる状況ではないが、向かい合っている店舗の売り上げが伸びているなど、当初想定していなかった現象もあるという。

 緒方社長は「開けてみないと分からないことも多い。こんな時だからこそ、お客さまの状況をよく聞き商品を提案したい」と語った。

(玉城江梨子)