過疎新法指定外で財政難に拍車 小規模自治体 診療所運営や農林水産業に影響


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 2021年度から新たな過疎法が制定されることに伴い、県の試算では県内18市町村の半数以上が指定から外れる見通しだ。過疎市町村の担当者は指定から外れると「農林水産業や診療所の運営など、各事業全般を網羅する形で適用しているので影響はかなり大きい」(東村)、「離島は財源の捻出が限られている。とても厳しくなる」(南大東村)などと気をもんでいる。

 箱物などのハード事業は他の制度でも起債できるが、代替が効かないのが過疎債で実施するソフト事業だ。診療所や歯科診療所の運営委託費に過疎債を充てている自治体の担当者は「仮に指定が外れても診療所をなくすわけにはいかない。他の住民サービスを絞ることになるだろう」(大宜味村)、「医療は決して欠かせないサービスだ。最善を尽くして指定から外れないようにする」(南大東村)などと語った。

 竹富町は高校生を村外へ派遣する費用の一部にも充てている。

 沖縄は1970年の過疎法施行時には米国施政下にあって適用が受けられず、第2次過疎法施行の80年から適用を受けた。2019年度までに約1061億円の過疎債の発行同意を得ている。

 県過疎地域振興協議会会長の宮里哲座間味村長は「(特殊事情は)ある程度の理解は示してもらっている。そうは言っても全国法なので、法律の中にどう書き込めるのかといった時に、『他の都道府県に説明できるのかという点で疑問が残る』とも言われる。10年遅れたことは継続の一つの理由になると思う」と話した。

 宮古島市は県内で唯一、市町村合併の特例として、合併後でも人口や面積などの一定条件を満たせば全域を過疎地域とする「みなし過疎」に指定されている。新法の議論をする与党・自民党はみなし過疎の存続の可否も検討している。

 一方、仮に新法で指定が外れても5年間は過疎債が発行できる経過措置も検討されている。自民は来年の通常国会に新法の法案を提案する予定で、年内には法案の骨格を固める方針だ。