沖縄民謡、バイオリンで表現 ヴァイパー奏者の大城敦博さん(46)


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大城 敦博さん

 ロックで使うギターのようなVの字型で、鮮やかな塗装を施した電機バイオリン「ヴァイパー」を奏でる。米国のヘビーメタルバイオリニストのマーク・ウッドさんが開発した楽器で、自分仕様に各所を改造して使っている。弓で弾いた音の一部を自動的に録音して繰り返し再生(ループ)させながら、そこに新たな音を重ねて、沖縄民謡の世界を表現している。

 国際通りのそばで育ち沖縄民謡は身近にあった。バイオリンを習い始めた時、祖母に聞かせようと民謡を弾いてみたが、どうも雰囲気が出ない。ある時、弦を押さえる左指で弦をはじく「ピチカート奏法」での二重奏の可能性に触れ、ピチカートで伴奏を奏でながら右手の弓で「てぃんさぐぬ花」のメロディーを弾いてみると、これがぴったり。「沖縄音楽もバイオリンで表現できる」

 アイリッシュ音楽にはバイオリンがつきもの。だがその音は、クラシックで形作られてきたバイオリンのそれとは異なり、アイリッシュ音楽の音になっている。同じようにカントリー音楽の、インド音楽の、アラブ音楽の、バイオリンがある。

 これまで民謡をバイオリンで表現しようと取り組んできたが、沖縄生まれのオリジナルのバイオリン曲を生み出すことにも挑戦し、琉球バイオリンという音楽ジャンルもあり得ると追求している。

 琉球音楽では歌三線というように、歌と三線が一体となっているのが大事だが、バイオリンで歌と三線の二つのパートをいかに表現するかに腐心する。「琉球バイオリンを皆さんにも弾いてもらいたい。沖縄音楽のインスト(歌なし音楽)もいいよと伝えたい」。そう願いながら、県内外の舞台で「ヴァイパー」を弾き続けている。

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 おおしろ・あつひろ 1974年7月、那覇市久茂地生まれ、京都府南丹市在住。那覇中、開邦高卒。6歳からバイオリンを習い始めた。大学進学を機に京都へ。現在はアルバム3作目「闘山羊―ピンダース」の年内リリースを目指して制作中。