米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、県に寄せられた意見書は県が9日に公表した速報値で1万8904件に上った。海外からも新基地建設に反対する意見書が多数寄せられた。有識者や退役軍人らが「平和への脅威だ」「自然破壊は許されない」などと訴え、玉城デニー知事に不承認を求めている。
沖縄防衛局は4月、大浦湾に広がる軟弱地盤の改良工事を計画に追加するため、設計変更し県に改めて承認を求める申請書を出した。県は9月8~28日に、その申請書を公表し「利害関係人」から意見を募った。利害関係の定義は定めず、本人が関係していると考えれば意見を受け付けた。
その結果、1万8千件を上回った。2013年に当初の埋め立て承認申請書が公表された際に集まった約3千件の6倍に迫る。担当の県海岸防災課は数が膨大なため、精査作業に他課からも応援を呼んで対応している。
海外に住む日本語話者や日本研究者らは日本語で書き、そうでない海外の人たちは英語で書いた上で日本語話者に訳してもらったり、翻訳サイトなどを使ったりして送っている。
オーストラリア国立大名誉教授のガバン・マコーマック氏は「日本近現代史の研究者として、沖縄の過酷な歴史、日本国家に蹂躙(じゅうりん)され続けてきた沖縄の人々の苦渋を知る者として、沖縄が戦争に巻き込まれる可能性を大きくする新基地に反対する」と述べている。
米ハーバード大教授などを務めた海洋生物学者のキャサリン・ミュージック氏は、オーストラリア沖にある世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフと比べ、大浦湾は狭い海域なのに426種以上のサンゴが生息していると指摘。「信じられないほど多様! 地形や深さ、流れ、水温など全ての絶妙なバランスで、驚くほど海洋生物に適した環境がある」と保護を訴えた。
アジア・太平洋にルーツを持つ米国人労働者を取りまとめ、全米に12以上の支部がある「アジア太平洋系アメリカ人労働者連合」(APALA)関係者や県系の退役米兵も新基地に反対する意見書を寄せた。フィリピンで貧困世帯の子どもたちを支援する団体代表もアジア地域の平和を願う観点から、基地建設の中止を求めた。
名護市に住む吉川秀樹氏(ジュゴン保護キャンペーンセンター)は、インターネットを使って英語で意見書の提出を呼び掛けた。基地建設について「米軍基地の建設なので、米国民はこの問題の当事者だ。アジア太平洋における平和の問題でもある。多くの人が自らの問題と捉えて意見書を送ってくれてうれしい」と語った。 (明真南斗)