「経営がもたない」介護事業がコロナで危機 利用キャンセルで減収続く


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 新型コロナウイルス感染症が、介護事業所の経営に暗い影を落としている。介護事業所の収入は実績ベースで得られるため、利用のキャンセルが増えた場合は減収となる。一方、いつでも利用者に対応できるよう介護職員を確保し続けなければならず、減収が続く中で人件費の確保が難しい状況に陥っている。介護事業所の運営者らは「事業者と従業員への十分な支援がない」「(コロナの)第3波、4波と続けば経営がもたない」と危機を訴えている。

「介護現場の崩壊は、利用者の安心な暮らしの崩壊にもつながる」と警鐘を鳴らす伊敷美咲さん(右)=9日、八重瀬町内

 糸満市で訪問介護の事業所「あしあと」を経営する伊敷美咲さん(31)は、事業所経営の厳しい現状を説明した。「2月から当日キャンセルが相次いでいる。訪問介護は3密になることはないが、各家庭を回ったり、買い物代行で街中に行ったりする職員からの感染を怖がって、利用者が自粛することが多い」

 新型コロナの影響で利用者が一時的に利用を自粛する中でも、事業所は利用再開を見据えて介護職員を雇用し続ける必要がある。経営環境は厳しさを増すが、新型コロナで打撃を受ける介護事業者への補償について、伊敷さんは「実情に即した補償が用意されていない」と言い切る。介護従事者への慰労金と、経営維持のための事業所対象の補助メニューが併用できない例があるという。「経営補助メニューはハードルが高くて使えないものも多い」と頭を抱える。

 このまま経営が悪化すると、事業所閉鎖への不安も高まる。伊敷さんは「閉鎖で深刻な影響が出るのは、利用者の健康面だ」と強調する。伊敷さんの事業所の利用者は、現在約30人。その8割が精神障がい者だ。「職員と利用者間の相性と信頼関係がとても重要で、簡単に代わりが見つかるものではない。介護現場の崩壊は、利用者の安心な暮らしの崩壊にもつながる」と訴えた。

(嘉数陽)