米軍と宜野湾消防、危機管理の形跡なし 識者「考え甘い、訓練を」


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 【宜野湾】インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)が調査した内容によると、宜野湾市消防本部と米軍消防が締結した消防相互援助協約を基に双方が情報交換などをした形跡はなかった。協約は効果的な内容履行に向け「必要な細部計画及び消防業務に関する計画を策定する」と記すが、両計画はいまだに策定されていない。

宇地泊川で滞留している泡消火剤をバケツで回収する宜野湾市消防本部の職員ら=4月11日、市内

 IPPは市消防に情報公開請求で関連資料を求めたが「不存在」を理由に不開示となった。市消防は、泡消火剤流出事故を踏まえて独自の活動基準を策定しているとし「今後、協約が効果的に履行できるよう必要に応じて双方の活動基準、配備資機材、緊急連絡先などの情報を交換し、円滑な援助体制を構築していきたい」と述べた。

 市消防の活動基準は、泡消火剤に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)などが河川に流出した際の対応などをまとめ、5月に策定した。7月に実施した訓練を踏まえて検証しさらに改定するという。

 IPPの河村雅美代表は「流出は過去もあり、市消防は危機管理として対応を考えないといけない。協約の目的で互いの安全を守るためにも、泡消火剤の対応は協約に含むと考えた方がいい。既存の協約などを使って情報交換などをするのが筋だ」と指摘した。

 米軍嘉手納基地の危険物取り扱い施設で6月、火災が発生し有毒な塩素ガスが放出された事故でも、比謝川行政事務組合ニライ消防本部と米軍消防が締結した同様の協約は適用されなかった。


山内正・元県消防学校長「対応要領や覚書も必要」

 宜野湾市消防本部は、任務などを定める消防組織法1条などを根拠に泡消火剤の回収作業は関係法令で明確に定義されていないとしているが、考えが甘く、具体的な災害が見えていない。同法1条にある災害には全ての災害が入る。泡消火剤の流出は、消防相互援助協約にある災害に当てはまる。

 災害対策基本法62条は、地域で災害が発生し、また発生しようとしている時は市町村長が発生を防御し、拡大を防止するため必要な応急措置を速やかに実施しなければならないと書いてある。

 原因をつくった米軍も責任者だが、市消防は基地外で泡消火剤の対応を含めた災害防除をしないといけない。また市長が責任を持って、県や国など関係機関に協力を求めるべきだ。

 協約を基に情報交換や米軍との合同訓練も地道にやるべきだろう。今の協約や新たな活動基準でも十分に対応できる。市は、泡消火剤の流出事故の応急措置要領などを地域防災計画に盛り込むことも求められる。

 協約を履行するに当たっては、対応要領や覚書といった計画も作っておくべきだ。この部分に関しては、調整機関である県が率先して関わることも大事だ。