いじめや暴力、不登校に子ども目線の取り組みを 関係者「隠さず対応」「決まり事に息苦しさ」


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 暴力行為やいじめの認知件数、不登校の児童生徒数が過去最多となった。沖縄県教育委員会の担当者は「いじめや暴力行為を隠すのではなく、見つけて対応するのが大切だ」と、積極的な認知の成果を強調する。一方、保護者や教員からは、決まり事が増えた学校で子どもが息苦しさを感じ、不登校につながっていると指摘する声も出ている。教育関係者は、子ども視点の取り組みの必要性を訴える。

 いじめや暴力行為の数の中には、ふいにぶつかって不快感を与えたり、ものを壊してしまったりといった軽微なものも含まれる。県教委の担当者は「深刻なケースはもちろんあるが、学校の環境が悪くなったかというと、そうではない。数だけを見て悪化したという印象が生まれ、現場が萎縮するようであれば不本意だ」と話す。

 一方、不登校が増加する背景に、学校のスタンダード化を挙げる教員や保護者は多い。ノートの取り方や話を聞く姿勢など、細かな決まりをつくっている。学校全体を落ち着かせるためのもので、学力向上対策と並行して広まったとみられる。ある小学校教諭は「朝のあいさつは会釈はだめで、立ち止まってしなければならない。授業中は鉛筆と消しゴムしか出してはいけない決まりがあり、机に筆箱を置いていると怒られる。子どもたちは息苦しい学校生活にストレスを感じている」と説明し、見直しを求める。

 フリースクールや放課後児童クラブを運営する侍学園スクオーラ・今人(いまじん)沖縄校の蟇目(ひきめ)崇校長は、不登校児童生徒の増加について「子どもたちは対人関係に不安を抱えているようだ。不登校ではないが、登校しぶりも増えている」と指摘。「何がしてあげられるか、子どもと一緒に考えることが大事だ」と話した。

 琉球大学教職大学院の丹野清彦教授は、いじめや不登校を「大人になることへの不安、自分の未来の地図が描けないというSOS」と受け止めた。社会全体の不安定さ、不透明さが子どもにストレスを与え、いじめや不登校という形で投影されたと分析する。「学校に行くのは幸せになるためのはずなのに、(いじめや不登校の)数が増え続けているのは残念だ。今ある対策が子どもたちのことを考えて出発したのか、考え直すきっかけになるといい」と話した。