「平成の復元」に携わった高良倉吉さんインタビュー 防火対策の首里城モデル目指す 


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高良倉吉氏

 首里城火災から1年。1992年の首里城復元に携わり、今回の再建への作業で国の「首里城復元に向けた技術検討委員会」委員長を務める高良倉吉琉球大名誉教授に再建を進める中での重要な視点や課題を聞いた。

 ―防火対策が重要になる。
 「今回の再建は防火・防災対策が最大のテーマだ。(検討委に)日本を代表する防火の研究者2人や那覇市消防局も入り、突っ込んだ議論で方向性を詰めつつある。スプリンクラーを設置し、方々に配水管が通る。熱を感知する設備も多く配置する。テロも想定し、地震対策もする。安全な避難も含め、大所高所から考え議論を詰めている。並行して文化財としての価値をどうキープできるかだ。もう二度と(人々に)喪失感を与えないように、火災に強い首里城、防火対策の首里城モデルを目指す」

 ―前回の再建からの変更点は。
 「新しい資料が見つかっており、それに基づいて修正する作業がある。一番大きな点は正殿2階の玉座の御差床(うさすか)の高欄(手すり)だ。その柱の形状は前回、時代考証をして楕円(だえん)柱にした。だが、その後見つかった資料で一部が丸くなっているなど形状が違っていた。県立芸術大所蔵の鎌倉芳太郎撮影の写真の中にあった。奥の方にあり、前回は私の目に触れなかった。想像したこともない形で相当な技術が必要だ。例えば大龍柱の向きを考えるような新しい資料があれば当然、見直すべきだ。そのようなものが見つからない限り、変わらない」

 ―美術工芸品の修復も課題だ。
 「ある一定の収蔵庫や展示も必要だ。だが正殿も含め城郭内に収蔵庫を造るスペースはない。王朝時代の首里城に収蔵庫はなく、それを造ると往事の復元に反する。城郭外の首里城公園内に造るとなると県の仕事になる。県には中城御殿(うどぅん)のあった旧県立博物館跡に収蔵庫を造ったらどうかと話している。そうすると中城御殿を復元し、その整備の一環として行わなければならない。円覚寺や御茶屋(うちゃや)御殿(うどぅん)の復元を望む声もある。国営公園内以外にも宿題が結構ある。長期的な計画で進めなければいけない」

 ―工事の過程を見せる方針だ。
 「今回の再建の大きなテーマの一つだ。出来上がっていく首里城を見てもらおうということだが、工事する人間にとっては大変だ。できるだけ安全な動線を確保し、多くの県民や沖縄を訪れる人に見てほしい」 (聞き手・古堅一樹、宮城久緒)