首里城22年度着工 島袋沖縄県政策調整官「琉球文化体現の地に」 森口沖縄記念公園事務所長「復元過程の公開重視」


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 首里城焼失から31日で1年を迎える。国は2020年度中に正殿の基本設計を完了し、22年度から着工、26年度の完成を目指す。県は新たな復元を契機に周辺のまちづくりや琉球文化の発信、文化財保護などを議論する意向だ。新たな首里城がどう生まれ変わり、どう活用されるのか。内閣府国営沖縄記念公園事務所の森口俊宏所長と、復元に関わる県各部を取りまとめる島袋芳敬政策調整監に聞いた。(聞き手 梅田正覚)


森口沖縄記念公園事務所長「復元過程の公開重視」

森口 俊宏氏

 ―現状と課題は。

 「正殿の復元は2026年度の完了を目指している。重視しているのは段階的公開だ。火災で国内外の人に心配をかけたが、支援も数多くあった。そういった思いもあり、変わりゆく首里城の姿を見てほしい。平成の復元を基本的に踏襲するが、火災を二度と起こさないための防災対策をしっかりする。そして新たな知見も取り入れる」

 「南殿と北殿の復元は正殿の完成後となるが、基本的には国営公園事業で対応する。城郭内は狭く、正殿の復元だけでも精いっぱいだ。完成時期は見通せない」

 ―正殿の防災対策は。

 「防災は早期覚知と初期消火が課題だ。そのためにもセンサー類をよりきめ細かに設置する。あとはスプリンクラーを設置し、防災面での強化を図る」

 ―国と県の連携は。

 「正殿を整備する国と管理をする県、指定管理者の沖縄美ら島財団、3者の連携が重要だ。やはりハードだけでなくてソフト面も大事だ。いくら最先端のハードを入れても動かせないと意味がない。そういった調整をまさに今やっている」

 ―大龍柱の向きについて議論が起きている。

 「いろいろな思いがあるのは承知しているが、復元の在り方は技術検討委員会で検討する。高良倉吉委員長が委員会で従来の向きにした経緯を説明していたが、委員からは特段異論は出ていなかった」


島袋県政策調整官「琉球文化体現の地に」

島袋 芳敬氏

 ―県の取り組みは。

 「県は国と那覇市など関係機関と連携して、焼失した建造物はもとより、首里城に象徴される琉球の歴史文化を再認識して、文化財などの復元収集や伝統技術の活用と継承などにも取り組む」

 ―基本方針の中にある新・首里杜(すいむい)構想とは。

 「今回の復興にあたり、古都首里の方向性を示した(1984年策定の)首里杜構想を社会環境の変化やニーズを踏まえて見直すことにした。首里杜地区が琉球文化を体現できる場となるよう、地域住民や関係機関と連携して取り組みたい」

 ―今後の課題は。

 「首里城火災の再発防止策や伝統技術を活用継承するための技術者の確保と育成、それから首里城周辺の交通渋滞をどうするかだ。多くの関心が寄せられている中で、県民が継続的に復興に参加できる仕組みづくりも課題だ。周辺のまちづくりも目標としているが、その実現に当たっては具体的な推進体制の整理や多額な財源の確保もある」

 ―どう取り組むか。

 「私は火災当日、焼け落ちた正殿の姿を目の当たりにして、いかんともしがたい喪失感に襲われたことを鮮明に覚えている。しかしながら、その直後から県民はもとより、首里城に思いを寄せる県内外の励ましの言葉や多くの寄付金が寄せられた。首里城復興へ向けて、国内外へ情報発信をしながら協力を得たい」