「全ての備えが駄目だった」 首里城焼失から1年 再発防止検討委委員長インタビュー


「全ての備えが駄目だった」 首里城焼失から1年 再発防止検討委委員長インタビュー
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 県民に大きな衝撃を与えた首里城火災から31日で1年がたった。国は最短で2026年度に正殿の復元を完了したい意向だ。火災原因はいまだ不明のため、最も重視されるのは再発防止体制だ。これについて再発防止検討委員会が議論を進めている。首里城地下にある日本軍第32軍壕の保存・公開をどうするかなど課題は山積している。こうした問題について取材し、焦点などをまとめた。

インタビュー 阿波連光氏 首里城火災に係る再発防止検討委委員長

 火災の再発防止策を協議する県の第三者委員会「首里城火災に係る再発防止検討委員会」委員長の阿波連光弁護士は30日までに本紙の取材に応じ、防火対策を踏まえた再建に向け、「木造建築物の首里城はそもそも燃えやすいことをまず一番に考え、みんなで守るという共通認識を出発点にしないといけない」と述べ、行政、県民の防災意識の重要性を強調した。国、県、沖縄美ら島財団の「三重構造」による管理体制や、指定管理の在り方の根本的な見直しを含め、再発防止策を検討する必要性があると指摘した。

 委員会が今年9月に県に提出した中間報告では、木造3階建ての正殿を中心に、密集した建築物群の特性や初期消火の課題、城郭という特殊な立地が消防活動に支障を来した点などを課題とした。阿波連氏は「火災報知器の精度、管理体制、消防との連携など、全ての備えが駄目だった。システムとしても機能していなかった」と指摘した。

 阿波連氏と委員らは10月24、25日に兵庫県の姫路城、京都府の妙心寺、清水寺を訪れ、防火・防災対策などを調査した。姫路城は姫路市が防災・防犯など警備や保全を担い、妙心寺は周辺地域と一体となった防災・消火体制を取っているという。

 「自分たちで守るという意識が非常に高く、沖縄と全然違う」「防火体制と文化財を守るという両方の発想がしっかりしている」と語り、設備面だけでなく、それを支える「人づくり」「仕組みづくり」の重要性を強調した。

 首里城の所有権者は国、管理者は県、指定管理者が財団という現行の管理体制について「責任の所在が分かりにくい。今の『三重構造』の仕組みで本当にいいのか考える必要がある」と説明。収益性やコスト削減を求められる指定管理者制度を防災面に適用する限界を挙げ、観光部門と安全防災部門を分けるなどの改善策が必要と述べた。

 委員会は来年3月の最終報告に向け、他府県の事例も参考にして管理の在り方について議論を続ける。