赤色の正殿「もう一度見たい」 刻一刻進む再生へ願い込め<首里城焼失1年・記者ルポ>


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 30日午前8時半すぎ。首里城公園の守礼門前では高齢者が散歩したり、修学旅行の小学生らが集合写真を撮影したりする姿があった。6月から一般公開されている正殿前の御庭(うなー)では、開場の午前9時前から警備員が複数配置されていた。

火災から1年となる首里城。訪れた女性が正殿の焼け跡(奥中央)を見つめていた=30日午後、那覇市

 昼ごろから首里城公園は多くの家族連れや観光客らでにぎわい始めた。訪れる人は正殿の方向を見上げながら歓会門をくぐり、守礼門前ではカメラを片手に記念撮影に興じ、焼失前と変わらない光景が広がった。

 午後3時すぎ、公園内の作業場では大龍柱の補修作業が進められていた。じっと見つめていた屋嘉比優美さん(36)=沖縄市=は友人の松本久乃さん(32)=同=と一緒に焼失後、初めて首里城を訪れた。屋嘉比さんは「焼失のニュースは衝撃で、夢なのかと疑った。今日も見慣れた首里城の姿はなく『ここはどこ?』と不思議な感覚だった」と振り返った。

 奉神門をくぐり、正殿の焼け跡を見ると多くの来場者は立ち止まる。じっと立ち尽くしていた木本一郎さん(66)=大阪府=と旬子さん(52)=同=夫妻は「一日も早く復興できるよう応援している」と声をそろえた。2人は観光で沖縄を訪れるたびに首里城に足を運んだ。旬子さんは「青い空に映えた赤色の正殿が美しかった」と振り返る。一郎さんは「生きているうちにもう一度首里城を見たい」と目を細めた。

 午後6時すぎ、月明かりが照らし始めると歓会門前に長蛇の列ができた。この日幕開けのプロジェクションマッピングを見ようと事前に申し込んでいた県民らが詰め掛けた。

 歓会門、北城郭、広福門、京の内の4カ所で、琉球の歴史や在りし日の首里城の画像が石垣などに投影された。下地はるかさん(29)=那覇市=は名嘉玲旺さん(26)=同=と一緒に映像を楽しんだ。宮古島出身の下地さんは「(首里城に来たのは)修学旅行以来。インスタで知り見に来た。こんな機会がなければ来ることはなかったかもしれない」と思いをはせた。

 「首里城、千年へ。」。京の内の石垣に投影されたメッセージの中に沖縄美ら島財団の花城良廣理事長の言葉も映し出された。花城理事長は「災害に負けない、強い首里城になり、沖縄の歴史や文化を子々孫々までつなぎたい」と思いを込めた。

 (仲村良太、当山幸都、吉田早希)