首里城公園で働き、首里城と共に毎日のように過ごした会社員の大城昌子さん(39)=那覇市=は城のさまざまな表情をインスタグラムで発信する。「働き始めて『ここすごい好きかも』と思うようになった。何でこんなに好きなのか自分でも分からない。逆に教えてほしい」。言葉に言い表せない。多くのウチナーンチュが抱くような率直な思いを語る。
2017年2月、首里城で働き始めた。首里石嶺町出身で「家から近い」という単純な理由で求人に応募し、公園の指定管理者「沖縄美ら島財団」の契約社員として採用され、入場券のもぎりを担当した。
沖縄を代表する観光地の一つである首里城には、毎日のように国内外から多くの観光客や修学旅行生が詰め掛けた。同時に、御嶽に拝みに来る人、散歩する人の姿を見掛け、生活に根付いている首里城の様子も目の当たりにした。
気付くと自身も毎日のように首里城を歩いていた。勤務の前後に城内を散歩し、休日も訪れるようになった。他の職員からは「毎日来ているんじゃない」と言われるほど。スマホを片手に正殿などの建物から門、働く人々まで、季節や時間、見る角度で変わる首里城の撮影を続けた。
好きな場所は「久慶門」。お気に入りの写真は、塗り直しで鮮やかさを際立たせた正殿。他にもいろんな顔の首里城を写真共有アプリ、インスタグラムに投稿し、見知らぬ人から「いいね!」と反応が寄せられた。
元々、首里城について学び詳しいというわけではなく、働き始めて魅力に取り付かれた。「首里城をもっと知りたい」とガイドによる城内巡りや、まちまーい企画などに参加した。知れば知るほど一層好きになった。
「正殿は駄目かもしれない」。2019年10月31日午前5時、目覚めてスマホを見るとスタッフのライングループはメッセージであふれていた。外を見ると首里城方面の空が赤く染まっていた。龍潭の前に駆け付け、消火活動をぼうぜんと見るしかなかった。
その日、来場者は入れるはずもなく、できることは何もなかった。「悲しいとは違う。気分が重かった」と1年前を振り返った。それから約2カ月、2020年1月に仕事を辞めた。火災が原因ではないが「一因だったかも」と語る。
辞めた後も首里城にはできるだけ通い、再建に向けた作業を撮影している。そして、在りし日の姿を取り戻すことを願い、「火災の前に大切さに気付けて良かった」と共にした日々をかみしめている。
(仲村良太)