行政に課題解決提言へ まちづくり 首里杜会議<再建に描く未来 首里城消失1年⑦>


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地元住民から行政への提言案を発表したすいまち研のシンポジウム=10月17日、那覇市のシェアオフィス「首里スタジオ」

 「渋滞のない、住民にも観光客にもやさしく、歩きやすいまち」「首里杜(すいむい)地区(首里城周辺)が地元であることを子どもたちが誇りに思える場に」。首里まちづくり研究会(すいまち研)が10月に開催したシンポジウムで「50年後、どんな首里のまちにしたいか」をテーマにした、県や那覇市への提言案が発表された。

 すいまち研のワークショップと、すいまち研も参加する首里杜地区まちづくり団体連絡協議会(首里杜会議)の議論を通して提言案をまとめた。内容をさらに磨いて年内に最終的な提言を行い、県が2020年度に策定する首里城復興基本計画に、地元住民の声を反映させることを目指す。

 首里杜会議は6月、首里城周辺のまちづくりに取り組む6団体が首里城周辺まちづくり団体連絡協議会として発足させ、その後、現在の名称に改めた。テーマごとに六つのグループに分かれ、議論を重ねた。

 交通問題のグループに参加する、すいまち研の平良斗星(とうせい)副理事長は那覇市首里大中町に住む。職場は首里城に向かう道と龍潭通りが交わる池端交差点のすぐそばだ。昨年10月の首里城火災前は、観光バスやレンタカーなどで龍潭通りを中心に渋滞が発生し、住民を悩ませた。5年ほど前には、池端交差点周辺で渋滞が発生し、救急車の通過に時間がかかったこともあった。

 首里杜会議の交通グループでは渋滞解消の議論から始まり、途中から福祉の視点も加わった。首里城周辺地域は高齢化が進み、近い将来、多くの住民が運転免許を返納すると予想される。だが個人経営のスーパーや商店は激減し、徒歩圏内に買い物ができる場所が少ない。渋滞の解消と同時に高齢者の移動手段も確保しようと、提言案には「新しい交通手段も活用した交通特区の検討」を盛り込んだ。平良さんは「再建を機に地域の課題も解決していきたい」と話す。

 御茶屋御殿(うちゃやうどぅん)など首里城周辺の文化財復元も大きな課題だ。県が4月に発表した首里城復興基本方針で、御茶屋御殿は「段階的な整備に向けた検討を進める」という表現にとどまった。

 御茶屋御殿復元期成会は、国・県・那覇市が役割分担や予算措置などを協議し、首里城復興基本計画に御茶屋御殿の復元を年次的に位置付けるよう求める考えだ。同期成会が参加する首里杜会議も、提言案に御茶屋御殿などの「段階的整備のためのロードマップ作成」を盛り込んだ。

 期成会の高良正次会長は「御茶屋御殿は冊封使らの歓待に使用され、琉球文化の発信地だった」と指摘し、首里城と一体となった整備を求めた。 (伊佐尚記)
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