沖縄の名物お巡りさん「ウチナーグチポリス」 防犯講話、広報も島言葉で


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還暦祝いの赤いちゃんちゃんこを身にまとう小渡鍚幸駐在員=10月26日、八重瀬町の具志頭駐在所

 【八重瀬】「わんねー『ウチナーグチポリス』やいびん」。流ちょうなうちなーぐちであいさつを交わす沖縄県八重瀬町の具志頭駐在所勤務の小渡鍚幸(ようこう)駐在員。うちなーぐちでお年寄りや子ども向けに防犯講話などを行い、地域では名物警察官として知られた存在だ。これまで約12年半、4カ所で駐在員を勤め10月24日、60歳の誕生日を迎えた。「今後も地域の安全とうちなーぐちの普及啓発に命を懸けていきたい」と還暦を迎えてもなお、情熱は冷めない。

 糸満市大里出身。20歳で警察官となり機動隊などを経て、40歳で石垣市の白保駐在所に3年間赴任。51歳の時、南城市知念の久手堅駐在所に異動になった。着任のあいさつに高齢女性宅を訪れ、丁寧な標準語で話し掛けると女性の態度が素っ気ない。改めてうちなーぐちで話し掛けたところ「ぬーが、はじめからうちなーぐちるましやる(なぜ、初めからうちなーぐちで話さないのか)」とお叱りを受けた。

 以来、生まれ島の言葉の大切さを再認識し、職務と私生活の両面で「ウチナーグチポリス」を名乗り、うちなーぐちの継承発展に努めてきた。「コミュニケーションだけでなく、うちなーぐちでないと伝わらない喜怒哀楽がある。独自の訛(なま)りや方言が地域の伝統や文化継承の礎になる」とその思いを語り出したら止まらない。

 約3年前から具志頭駐在所で勤務する。職務の空き時間を見つけては、標準語のパンフレットを翻訳したり、駐在所の広報を標準語とうちなーぐちの2言語で発行したりと、本島南部を中心にうちなーぐちを使って防犯や交通安全を呼び掛かけてきた。

 公民館などで開く安全講話は300回にも上る。時には、若手警察官からうちなーぐちの指導依頼を受ける。喜びのあまり、矢継ぎ早に言葉を浴びせた結果、「私の顔を見ると若手警察官が逃げていく。うちなーぐちで話し掛けると、パワハラだと言われかねない」と継承の難しさを冗談交じりに話す。

 40年の警察官人生も退官まで残り約5カ月。一抹の寂しさをにじませるかと思いきや、「順風満帆な警察官人生だった。退官後は交番相談員になって、空き時間にはうちなーぐちの安全講話で全島中を巡りたい。辺戸岬までいちゅんどー(行きますよ)」と、まだまだ元気いっぱいだ。
 (高辻浩之)