ゴビ砂漠の地上絵、嘉手納基地を模す?台湾の空港説も 中国訓練か


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トーマス・シュガート氏が嘉手納基地を想定していると分析したゴビ砂漠にある中国軍事施設=2016年10月(グーグル・アースから)

 中国北西部のゴビ砂漠にある地上図が嘉手納基地を再現している―との一部報道が話題となっている。だが、その図は嘉手納基地よりも、台湾の台中国際空港に似ている。一方で米海軍幹部が同じゴビ砂漠にある別の施設を指し、嘉手納基地をはじめとした在日米軍基地を想定した弾道ミサイル実験場だと指摘した報告がある。識者は「米中対立が強まっていく中、有事の時に基地があるために攻撃される危険性が高まっている」と指摘している。

 識者「米中衝突なら沖縄一番危険」

 中国北西のゴビ砂漠地帯にある地上図は衛星写真で見ることができる。滑走路を想定したとみられる縦の長さは、約3700メートル。フジテレビが10月下旬のニュース番組で取り上げ、嘉手納基地の滑走路の長さ(3689メートルが2本)に一致するとし「中国軍がミサイルの標的にしたとみられる『嘉手納ターゲット』」だと説明した。ただ形状などは異なる。

 軍民共用の台中国際空港も滑走路が3659メートルだ。誘導路などの形状も地上図と合致する。外交・安全保障専門のオンライン誌「ディプロマット」など米メディアも台中国際空港を模したものとして報じている。

 一方、米海軍幹部のトーマス・シュガート氏らは2017年の報告書で、ゴビ砂漠の端にある中国軍の弾道ミサイル訓練場は、嘉手納基地や神奈川県の横須賀基地、青森県の三沢基地を模していると指摘した。「中国は米軍の前方基地への先制攻撃を可能にする訓練を積んできている」と警戒している。

 中国は人民解放軍のロケット軍の能力をあえて見せているとも分析。軍事力を示すことで米国を威嚇する狙いがあるとみられる。

 日本の防衛省防衛研究所の高橋杉雄防衛政策研究室長は著書でシュガート氏の研究に触れ「脅威は想像上のものではなく現実かつ切迫したものとなり、対抗策を講じることが急務になっている」と論じた。

 日本国内の米軍基地、特に基地が集中する沖縄を巻き込みながら、米中の緊張が高まっていることが分かる。

 沖縄国際大の野添文彬准教授は「台湾有事の際にも嘉手納基地は攻撃対象になり得る。米中が本当に衝突したら一番危険なのは沖縄だ」と話す。中国のミサイル能力が向上したことで、狙われやすい沖縄への基地集中は、軍事的な弱さにつながる。県民にとっては危険性の高まりを意味するとし「米軍の戦略や国際情勢について沖縄側もアンテナを張り、分析することが大事だ」と語った。 (明真南斗)