「移設方針変化ない」 政府関係者 現政権退陣に安堵も


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 米大統領選でバイデン氏が勝利したことを受け、政府内には前向きに受け止める声が相次いだ。バイデン氏は地球温暖化に関するパリ協定への復帰を明言するなど国際協調を重視する姿勢で、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)や、同盟国に防衛費の大幅増額を求めるとみられるトランプ政権からの方針転換が見込めるためだ。バイデン政権発足後も名護市辺野古の新基地建設問題をはじめとした沖縄問題への対応は当面変わらないとみられるが、日米のリベラル系国会議員の連携を通じて新たな動きが出る可能性もある。

 米軍普天間飛行場の返還は米民主党のクリントン政権時の1996年に日米合意した。同じくオバマ政権下の2010年には、日米両政府が辺野古地先と、これに隣接する水域を移設先とする日米共同声明を発表し、米民主党政権は辺野古移設の決定に携わった「当事者」でもある。

 加えて、トランプ政権下では米中対立が深刻化した。経済力や軍備の増強を続ける対中国の対抗意識が党派を問わず米国内の政治家の「共通認識」(政府関係者)として強まる中、政府関係者は「辺野古移設の方針は政権交代しても変わらない」と強調する。

 他国との交渉で駐留経費負担や防衛費増額を受け入れなければ米軍を撤退することを示唆したトランプ政権が続くと「沖縄から、どうぞ(撤退してください)との声が上がらないか」(与党関係者)と、米軍基地負担を巡る議論に波及することへの警戒感もあった。“無茶ぶり”を重ねてきた現米政権の退陣へ安堵(あんど)感が浮かぶ。

 ただ、コロナ禍の影響でバイデン政権発足後も引き続き米中間の国力差が縮小していくことが想定される中、「日本側に新たな負担を求める可能性もある」(防衛省関係者)との見方もある。

 一方、日本の野党第1党・立憲民主党など野党国会議員らは今年6月、「日本プログレッシブ議連」を発足した。米民主党の最大議連「プログレッシブ議員連盟」(CPC)と協力し、新自由主義経済に代わる、自由で平等な社会の実現をうたう。沖縄の米軍基地についても主張を提起していく考えだ。議連の発足に携わった屋良朝博衆院議員は「辺野古の新基地建設工事中止は日本政府が決めることだ」と述べ、政策転換には日本側の政権交代が必要だとした一方、議連を通じて「米側にも理解を求めていく」と話した。