【深掘り】検証できない沖縄県のコロナ対策 議事録なく、サイトも更新止まったまま 


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 沖縄県は新型コロナウイルス感染症対策本部会議や専門家会議の議事録を作成していない。感染の第3波やインフルエンザとの同時流行が想定され対応の検討が急務となる中、政策決定の過程や医療情報が十分に共有されず、外部からの検証が難しい状況だ。医療に従事する当事者からも透明化を求める声が上がっている。

インフォームド・パブリック・プロジェクトが情報公開請求で入手した、県衛生環境研究所の資料。右上に「取扱注意」とある=6日

 6月に本紙などが議事録を作っていない事実を報じ、県は7月に「議事概要作成指針」を策定した。だが、その後も発言者が特定されない形での議事概要のみを作成している。県は発言者の所属部が分かれば問題ないとの認識を示している。

 県は指針で、知事や副知事が出席して施策を決定する会議について議事概要を作り公表すると定めた。発言者の明記は義務付けなかった。大城玲子県保健医療部長は「(議事概要で)議論の内容を分かりやすく発信できている」と方針転換を否定した。

 専門家会議も議事概要にとどまる。議事の箇条書きで、発言者は不明だ。これまでに12回開かれているが県ウェブサイトの更新は5月の第7回で止まっている。

■「透明化を」

 県保険医協会理事会は9月、県の政策決定について透明化を求める要請書を県に提出している。情報提供が乏しく現状を適切に把握できないとし「医療従事者や県民が県の方針や政策を理解し、感染防止に努力するためにも充実した情報提供を求める」と訴えた。

 保険医協会の高嶺朝広副会長は「県と共にコロナの問題を解決していきたい。協力したい、一緒に頑張りたいと思っていても、基本的な情報が開示されていなければ経緯が把握できない」と語った。

 例えば、県は一時、無症状の濃厚接触者を検査対象から外す方針を示したことがあった。そうした判断の妥当性を検証したくても、材料がなく経緯を十分に把握できない。要請書で専門家会議の議事録作成や県民・医療従事者への情報提供の充実を求めている。

 東京都の取り組みを念頭に、コロナの流行状況について専門家がモニタリング(監視)した結果を定期的に公表することも要請に盛り込んだ。都は週に1回程度、医師や感染症の専門家に現状を分析してもらい、結果を「総括コメント」として公表している。専門家会議や対策本部会議の様子も動画で公開し、議事録も作成・公表している。

■消極的な姿勢

 沖縄県も検査状況や感染経路の分析など医療情報をまとめた資料を作っていることが、調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP、河村雅美代表)の情報開示請求で明らかになった。感染状況をどう把握し分析しているかという現状認識は政策判断の基礎であり重要だが、県はこの資料を積極的に公表してこなかった。

 7月から9月までに少なくとも27回、発行しており、県衛生環境研究所が作成し、県庁や保健所、医師会、検査センターへ配信されている。医師会などから医療関係者に共有される算段だ。だが、実際は現場の医療従事者に行き渡っていない。また、各病院の逼迫(ひっぱく)の度合いも共有されていない。

 「地域の医療機関で勤務する医師たちにもコロナの診療情報を届けてくれると助かる」と語るのは、群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師だ。原因不明の肺炎などの患者を診療する場合、コロナ感染が疑われるといい「適切に診断して治療するため、各地域での詳細な疫学情報が重要だ」と指摘した。

 各病院のコロナ患者の入院状況を把握できていると、感染が疑われる患者を紹介する際、適切に病院を選択するために役立つという。

(明真南斗、西銘研志郎)