仲井真元知事への叙勲、経産省が係争知らず推薦 内閣府は「総合的判断」


仲井真元知事への叙勲、経産省が係争知らず推薦 内閣府は「総合的判断」
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 【東京】秋の叙勲で最高位の旭日大綬章を受章した仲井真弘多元沖縄県知事(81)が、亡くなった夫人の債務の連帯保証を巡り、民事裁判で係争中であることが13日までに分かった。仲井真氏を推薦した経産省は、叙勲推薦に当たって「係争中の民事裁判がある場合」に推薦できないケースがあるとする留意事項を設けているが、この事実を把握していなかったことも判明した

 叙勲決定には、事業を所管する内閣府も審査に当たるが、内閣府は受章理由について「総合的に判断した」と述べるにとどめた。

 訴状などによると、訴訟は、昨年4月に亡くなった国場組元会長の国場幸一郎氏の夫人(77)が原告となり、昨年6月に提起された。国場氏の夫人は、2002年に死亡した仲井真氏の夫人に国場氏が貸し付けたとされる債務の一部として、5772万円の返還を仲井真氏に求めている。国場氏の夫人は、国場氏が1997年に仲井真氏の夫人に9千万円を貸し付けたとし、仲井真氏がこの債務の連帯保証をしたと主張している。

 国場氏の法定相続人である夫人は、仲井真氏の夫人が記載したとされる借用書を債務の証拠として提出し、自身の相続分の返還を求めた。これに対し仲井真氏は債務の存在を否定。2018年から調停を進めていたが、不成立となり訴訟に発展した。

 原告側代理人によると、訴訟は昨年9月に弁論が開かれ、来年にも仲井真氏の尋問が予定されているという。

 仲井真氏は3日、沖縄電力元会長や元県知事としての功績を評価され、経産省の推薦で最高位の旭日大綬章を受章することが決まった。同省は推薦を見直すケースもある「推薦に当たっての留意事項」として「過去に法律違反による有罪判決を受けた」など七つの事項を設けている。

 うち一つが「係争中の民事裁判がある場合」としているが、経産省は裁判の件を把握していなかった。

 経産省担当者は「省内でも審査しているが、仲井真氏を推薦した沖縄電力からの報告がなかった」とし「省庁の審査だけでなく内閣府賞勲局も審査に当たる。最終的な判断は内閣府が行う」と回答した。

 内閣府賞勲局の担当者は訴訟の件も含めて「審査の過程については答えを差し控える」とし、受章理由については「総合的に判断した」と述べた。

 13日午後、仲井真氏は自宅のインターフォン越しに呼び掛けた本紙記者の質問に一部答えたほかは回答しなかった。「受章は経産省からの推薦か」との問いには「そうだと思う」としたが、裁判の件や経産省が設けている留意事項については明瞭に答えなかった。取材に応じなかったため、再び自宅前で回答を促したが、返答はなかった。