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ヤミ金が不正受給指南か 借金苦の20代男性申請、知らぬ間に全額引き出される


この記事を書いた人 Avatar photo 高辻 浩之
仏壇に手を合わせる20代男性(当時)の遺族=16日、沖縄本島内

 新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した個人事業者を支援する持続化給付金を巡り、建設作業員の20代男性=沖縄本島中部=がいわゆるヤミ金業者に持ち掛けられて給付金を不正申請し、100万円を受給していたことが分かった。ヤミ金業者は振込先となる男性の口座から全額を引き出したという。今年の夏、男性は借金などを苦に自ら命を絶った。17日までに男性の遺族が取材に応じ、明らかにした。給付金が反社会的勢力に流れている可能性がある。 

 遺族によると、亡くなった20代男性は建設会社に所属して現場で働き、持続化給付金の受給対象ではなかった。無登録の上、高金利で金を貸し付けるヤミ金業者や県内外の消費者金融から多額の借金があった。借金の取り立てに悩み、今年、国から支給された一律10万円の特別定額給付金では、家族の分も加算して返済に充てるなどしていた。

 ヤミ金業者の男らが給付金の代行申請の話を持ち掛けた後、県内金融機関の男性名義口座に7月ごろ、給付金100万円が振り込まれた。男性は自分が不正受給に関与したこと、口座に100万円が振り込まれたこと、すでに全額引き下ろされたことについて、金融機関から問い合わせがあるまで知らなかったという。

 遺族は「借金返済に充てる金に困っていると聞いていた。もっと早く相談に乗っていれば…。命あっての金なのに」と沈痛の表情だった。

 発覚後、男性は沖縄県警に相談したという。交際相手との結婚を意識し、そのことを家族らとも話し合っていたが、男性は自ら命を絶った。遺族は男性について「不正受給に手を出すような知識はなく、指南者がいないと不正受給は不可能だ。頼み事をされると断れないところがあった。(ヤミ金業者は)若い人間が返しきれないような金を貸し付けた後、家族みんなから取り立てに回る。ヤミ金業者に殺されたようなものだ。悔しい」と語った。

(高辻浩之)