米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けたサンゴ類の移植を巡る訴訟で第1回口頭弁論が20日、高裁那覇支部であった。意見陳述に立った玉城デニー知事は、県の審査を待たずにサンゴ移植許可を命じた農林水産相の指示を「異常な事態だ」と批判した。即日結審したが、初弁論の前に書面で互いの主張を交わしてきており、関係者の想定内だった。
軟弱地盤の改良工事を追加するために防衛局が提出した設計変更を巡っても、法的な争いに発展する見通しで、今回のサンゴ訴訟はその前哨戦に位置付けられる。双方とも判決の内容を踏まえ、設計変更に関する戦略を検討する見通しだ。
■想定内
20日の口頭弁論は、玉城知事の陳述のほか、既に提出している書面の要旨を読み上げた。地方自治法に基づく自治体と国の裁判は迅速に行うことが定められており、県弁護団の加藤裕弁護士も事前の市民集会でマイクを握った際にそう説明した。
県は法律やサンゴの識者ら6人の証人尋問を求めていたが裁判所は認めなかった。埋め立て承認撤回を巡る関与取り消し訴訟の一審も即日終結し、証人が認められず、県が敗訴した経験がある。だが県幹部は今回の即日結審が県側にとって不利になることを否定。「事前に書面での主張を重ねてきた。通常2、3回弁論を開いたのと同程度に主張できた」と述べた。
陳述を終えて取材に応じた玉城知事も「書面などを準備し反論も提出している。しっかりと主張できた」と胸を張り「裁判所には県の自主性と自立性を尊重した公正な判断を希望したい」と求めた。
■開拓
大浦湾側のサンゴ類について移植の許可を得ても、軟弱地盤の改良工事には知事の承認が必須となる。そのため工事の完成のめどは立っていない。それでも政府が是正指示まで出して移植許可を求めたのは、玉城知事が設計変更を認めないことを想定し、その法廷闘争に備えているためだとみられる。
今回のサンゴ訴訟で農水相の是正指示が適法だとの判断が下れば、政府にとっては強制的に許可を認めさせるための道筋が開く。このため県としては断固として阻止したい考えだ。
玉城知事は意見陳述の中で「こうした是正指示が許されれば、あらゆる事務処理について大臣が意のままに許可・不許可を判断できることになる。国民から批判を受ける」とけん制した。
サンゴ訴訟の高裁判決は来年2月に出るが、どちらが勝っても上告し裁判が続く見通しだ。一方で防衛局が提出した設計変更については、県の審査が少なくとも年度末までかかる予定で、訴訟と並行して進む。
(明真南斗)