【記者解説】辺野古サンゴ訴訟 沖縄県側に勝算は?


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埋め立てや護岸工事が進められる新基地建設現場=9月3日午後、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 名護市辺野古の新基地建設を巡る国と県の9件目の訴訟は、沖縄防衛局による埋め立て予定地のサンゴ類の移植申請を許可するよう県に促した農林水産相による是正指示の適法性が争点だ。県はこれまでとは別の切り口で、埋め立て工事を強引に進める国の対応と地方自治の在り方を問うている。

 是正指示について、県は国の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」に審査を申し出たが、係争委は指示内容の問題点の議論はせず、違法ではないと判断した。新基地建設の国策に従い、県の意思決定に口を挟む農水相の姿勢を追認するような内容で、県は不服だとして提訴した。

 ただ、県にとって今回も勝訴への道は険しい。20日の初回弁論で大久保正道裁判長は、県と国双方から多くの書面が提出されているとし「これまでに十分な主張がなされている」と述べ、即日結審した。県側が求めた行政法やサンゴの専門家ら6人の証人尋問は実現しなかった。

 今回同様、係争委を経て昨年提訴した埋め立て承認撤回を巡る関与取り消し訴訟も即日結審した。判決は係争委の判断をほとんど踏襲し、県の訴えを退けた。県が地方自治の在り方を司法の場で問い続ける中、地方自治の趣旨を尊重した判断が出されるのか、注目される。

(前森智香子)