国土交通省が19日に発表した地価動向報告(10月1日時点)で、那覇市の県庁前地区が、前回調査(7月1日)比0~3%未満減の「下落」に転じた。下落したのは東日本大震災後の全国的な景気低迷の影響を受けた2011年第3四半期(7月1日~10月1日)以来、9年ぶり。新型コロナウイルス感染症の影響で観光客が減少した影響を受け、店舗賃料が減少して土地収益性の低下につながった。
県庁前地区はオフィス街に勤務する人や国際通りを訪れる観光客を対象とした飲食店や小売店などの店舗が多い。好調だった観光需要を取り込んで、12年第4四半期以降は上昇を続けていた。19年後半は、2四半期連続で6%以上の上昇を記録していた。
しかし、新型コロナの世界的な感染流行で海外との往来が停止し、国内旅行需要も減退したことで打撃を受けた。
動向調査をした不動産鑑定士は「休業する店舗が見られるほか、営業は行うものの売上高が大きく減少した店舗が多い」と指摘。「不動産の極端な売り急ぎは見られないものの店舗賃料は下落傾向となって、地価動向はやや下落で推移した」とコメントしている。将来の地価動向も、やや下落傾向が続くと予想している。
県不動産鑑定士協会の髙平光一会長は「店舗の売り上げが落ちると、家賃が下がったり空きテナントが生じたりして収益性が落ち、不動産価格に影響する。国際通り周辺は感染症の影響を直接的に受けていることの現れだろう」と分析し、「現在は政府の給付金などで一定の下支えがあるが、もし支えがなくなったら、地価も一気に下がってしまう可能性がある」と話した。