首里城の大龍柱、どの向きで再建すべき? 討論会に130人来場、2時間待ちの人も


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首里城再建に向けて活発な議論が交わされた「首里城再興に関する公開討論会」=22日午後、那覇市おもろまちの県立博物館・美術館

 22日の「首里城再興に関する公開討論会」は、首里城正殿前の大龍柱の向きや第32軍司令部壕の整備・公開などについて、登壇した識者6人による白熱した議論が交わされた。新型コロナウイルス対策で入場人数に制限がある中、開始の2時間前から待つ人もいた。会場内外で約130人が討論会を見守り、ユーチューブで生配信された。

 国の「首里城復元に向けた技術検討委員会」は従来、大龍柱について「寸法記」などを基に相対(横)向きにする方向で作業を進めてきた。しかし、1877年にフランス人のジュール・ルヴェルトガが撮影した正殿の写真で、正面向きの大龍柱が確認された。

 討論会で登壇した、同検討委委員長の高良倉吉琉球大学名誉教授や、委員の安里進県立芸術大学名誉教授も、写真や関連資料を分析して再検証する必要性に言及した。ルヴェルトガの写真について安里氏は「1877年の写真であることは間違いない」とした上で「一つ一つ検証、議論し詰める点がたくさんある。研究者の研究を待ってほしい」と語った。

 ルヴェルトガが撮影した写真について、14日に報告した神奈川大学の後田多敦准教授は、討論会にオンラインで参加した。「相対説が成立するには、1877年までの間に王府が大龍柱の向きを変えたという証拠を探さないといけない」と指摘した。

 1992年に大龍柱の復元に関わった西村貞雄琉球大学名誉教授は大龍柱や階段の欄干(らんかん)(手すり)、台石などの写真や図を交え「正面向き」で再建すべきだとの見解を示した。友知政樹沖縄国際大学教授も議論を整理した上で、正面向きを主張した。

 元県知事公室長で、第32軍司令部壕の保存・公開を求める会副会長の高山朝光氏も登壇し「32軍壕は、負の遺産として、保存・公開を実現してほしい」と語った。

 討論会の終盤、司会の前泊博盛沖縄国際大学教授が客席に、大龍柱はどの向きで再建した方がいいと考えるか挙手で意見を聞いたところ、圧倒的多数が「正面向き」に手を挙げた。

 県から首里城の管理・運営を委託されている、沖縄美ら島財団の花城良廣理事長も来場し「討論会でたくさんの知恵が出てきた。令和の再建は『首里城千年へ』を合言葉に展望を描きたい」と話した。