2022年度から本格適用される高校の新学習指導要領は「探究」が大きなテーマだ。県内の各学校は適用に先駆け「探究」の学習や、より実践的な内容に掘り下げた課題解決型学習(Project Based Learning=PBL)を活発化させている。学校だけでなく、企業など学外の支援を受けて個人で取り組む学生も多い。名桜大学3年の毛利日皆さん(23)を例に、学生が自ら課題を設定し、解決に挑む探究、PBLの実践を紹介する。
毛利さんは次世代リーダー育成事業「Ryukyufrogs(リュウキュウフロッグス)」に参加し、「食物アレルギー」の問題を解決することに挑んだ。自身もアレルギーがあり、外食の際に困った経験があることから、アレルギー対応の飲食店を紹介するサービスの構築を考えた。
アレルギーがある人にとってはストレスがなく外食を楽しみ、飲食店にとっては新たな顧客の開拓につながる―。毛利さんはウィン・ウィンの関係が築けると期待したが、もくろみは外れた。電話やメール、直接訪問などで飲食店にサービスを説明するも、返ってくるのは冷たい反応がばかり。飲食店側にとっては必ずしも魅力的なサービスではないと思い知らされた。
社会に出ることで分かったリアルな反応に、毛利さんは困惑した。リュウキュウフロッグスを通してつながる起業家らの助言も受け、方向性の変更を余儀なくされた。「思うようにいかず、泣くこともあった」というが、誰かに相談することで新たな考えが浮かぶということも経験した。
現在はアイデアを変更し、アレルギーがある人などを「公式アンバサダー」と位置付け、飲食店での体験を集めるコミュニティーの構築を目指す。
写真投稿アプリ「インスタグラム」やラインのオープンチャットなどを駆使し、優良店の情報を発信する考えだ。
毛利さんは自身で課題を設定、調査し、アイデアを磨く作業と、思い通りにはいかない社会の厳しさを知る経験を積んだ。「悔しい思いをし、自分の中にこんな黒い感情があるのかと気付かされた。課題を解決するために何が足りないのかを考えることは、自分自身と向き合う作業でもあった」と振り返る。
探究学習やPBLは、学生が社会課題に気付き、解決方法を実践的に学ぶだけでなく、自分自身を知って成長する機会にもなるようだ。