「瀬長亀次郎物語」津嘉山正種が迫真の語り オスプレイ演出も (11月29日・ガンガラーの谷)


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瀬長亀次郎の半生を亀次郎自身の言葉と共に熱演する津嘉山正種=11月29日、南城市玉城のガンガラーの谷

 那覇市出身の俳優・津嘉山正種によるひとり語り舞台「瀬長亀次郎物語」(原案・謝名元慶福、台本構成・津嘉山、演出・菊地一浩)が11月29日、南城市玉城のガンガラーの谷であった。沖縄テレビ主催の洞窟ライブ「Breezing Hall Project」の一環。米軍占領下の沖縄で、沖縄住民のために尽力した不屈の政治家・瀬長亀次郎の半生と、いまに続く沖縄の苦悩を迫真の朗読で伝えた。(藤村謙吾)

 亀次郎の演説に心を打たれて以来、追っかけをしていた老人と孫娘の会話で物語は展開した。老人は、亀次郎が収監されていた沖縄刑務所を出た際に出迎えた人々が後ろをついていこうとしたことや、琉球政府創立式典での星条旗への宣誓拒否など史実を孫娘に、語り聞かせる。洗濯を進んでやる家庭での様子なども交え、党派を超えて民衆に愛された政治家を描いた。

 那覇市長の座を米軍の布令によって追放された後の演説シーン。津嘉山は「我々は決して負けたのではない。民主主義を捨てたアメリカが負けたんです」「人間としての誇りを守り抜き、踏みにじられないためにも、我々の子どもたちがこの沖縄で豊かで人間らしい暮らしができるように、さらに沖縄に生まれて良かったと子どもが言えるように、そんな沖縄にするために、我々はさらに強くかたく団結していかなければなりません」と時に手を掲げて、力を込めて呼び掛けた。

 冒頭と最後に流れるオスプレイのごう音は、県民投票や知事選などで示された「反対」の民意を顧みずに新基地建設が進められる、現在も「踏みにじられている」沖縄を現した。亀次郎の言葉の数々が、県民にとって今も傾聴に値するものだと痛感させた。

 終演後、頰を紅潮させた観客は鳴り止まぬ拍手で、津嘉山の名演説をたたえた。

 妻の直子さん(51)と息子の国久さん(10)と観劇に訪れた大城浩詩さん(54)=宜野座村=は「平和教育の題材として最高の舞台だった。沖縄に亀次郎さんのような人がいたことを忘れてはいけないと感じた」と語った。国久さんは「苦しい思いをしてもあきらめず、何度も立ち上がる亀次郎さんの姿が印象的だった」と話した。