「鳥の衝突ではない」JAL緊急着陸で専門家 エンジンむき出し、あわや…


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飛行中に左側エンジンカバーが外れた様子(乗客提供)

 4日に左エンジンのトラブルで那覇空港に引き返した日本航空(JAL)のボーイング777型機は、2004年にJALに経営統合された旧日本エアシステム(JAS)が、かつては運航していた。

 日本航空元機長で航空評論家の杉江弘氏は、カバーが外れエンジン部分がむき出しになった損傷状況から「かなり大きい、珍しいトラブルだ。バードストライク(鳥の衝突)ではこうはならない」と分析する。エンジン内の部品の経年劣化や、点検不備の可能性を原因として指摘する。

 4日のトラブルでは、左エンジン部分から火が上がるのを乗客が目撃している。

貨物機の駐機場に移動したJAL904便。トラブルが生じた左側エンジンのカバーが開き、周囲には車両が集まっている=4日午後1時56分、那覇空港

 杉江氏は「トラブルで火を噴くのは、だいたいがエンジン内後方のタービンブレード(回転翼)だ。万が一、エンジンが停止してももう片方だけで飛べるので、正しい動作をすれば離着陸はできる」と語る。

 ボーイング777で、過去に起こった同様のトラブルでは、エンジン後方のタービン部分に疲労破壊などが確認され、異常につながるケースが多いという。ただ、4日のトラブルではファンブレードと呼ばれるエンジン前方の羽や、それらを覆うカバーも損傷していた。

 杉江氏は「トリプル7(ボーイング777)のトラブルとしては珍しい」と指摘。その上で「ファンブレードに最初の破損があり、それが後部の燃料室に及んで異常が起こったのではないか」と推論した。

 今回の機体が長期間運航しているとはいえ、エンジンは取り換えられることがあるとして「機体が古くても、エンジンも老朽化していたとまでは言えない」と付け加えた。


ドキュメント

 11時34分 乗客178人、乗務員11人を乗せた日本航空904便那覇発羽田行きが那覇空港の駐機場から離れ出発

 11・45 同便が離陸

 11・51 那覇空港の北100キロ、高度5千メートルの上空で、同便左翼エンジンから異音と振動が発生。エンジンの不具合を示すメッセージが操縦室の計器に表示され、運航乗務員が当該エンジンを停止し、那覇空港引き返しを決定

 11・53 運航乗務員が管制機関に緊急事態を宣言し、那覇空港に引き返す

 12・23 那覇空港第2滑走路に同便着陸。第2滑走路が閉鎖される

 13・00 第2滑走路閉鎖解除

 13・26 同便がけん引され駐機場に到着

 14・41 同便の乗客173人を乗せた振り替え便、日本航空910便が出発

 15・18 同便の乗客3人を乗せた日本航空912便が出発。乗客2人は搭乗をキャンセルした