12月に入り、忘年会のシーズンを迎えた。来月からの新年会も含め、飲食店にとってかき入れ時の重要な時期だが、県内の新型コロナウイルス感染拡大は収束せず、会食・会合などからの広がりは続いている。県は11日まで、会食をする場合などの新型コロナ感染予防対策を呼び掛けている。感染のリスクを抑えながら飲食店などの利用客減少を食い止め、県経済を守る手だてはあるのか。
飲食店では忘年会の予約件数が減っており悲痛な声が上がる。居酒屋「えん沖縄」の運営会社BRIDGESによると、例年、忘年会シーズンの11月中盤から12月の平日は、ほぼ満席だった。ことしの予約は例年の半分以下だという。11月の全体売り上げは3~4割減で、12月も同様の落ち込みを見込む。伊藤兼介営業企画部長は「飲食業は大きく(新型コロナの)影響を受ける。一人一人が(感染防止に)気を付けて、例年通りの水準に戻ってほしい」と願う。
一般企業や行政で忘年会の中止が目立つ中、工夫を凝らすところもある。ANAカーゴ沖縄統括支店の渡辺英俊支店長は、全体忘年会を中止する一方で「職場のコミュニケーションを取るためにも、ランチで開催しようかな」と話す。飲酒をせずに短時間で終えることができ、感染リスクを減らす方法の一つだと考えている。県がこれまでに呼び掛けた、会食・会合の注意事項は(1)座って席を移動せずに食事をする(2)隣の席とは最低1メートル間隔を空ける(3)会話をする際はマスクやハンカチで飛沫(ひまつ)を防ぐ(4)飲食は4人以下の少人数で2時間以内、2次会へ行かずに帰宅する―など。県民がルールを守って行動することで、感染拡大防止につながるとみる。
座り方も工夫することで飛沫の量が変わる。飲食店では、人と人との距離が1メートル以下になるケースが多く、対策を取らなければ感染リスクが高い。理化学研究所チームなどがスーパーコンピューター「富岳」を使って計算した結果、飲食店の4人掛けテーブルで会話をした際の感染リスクは、「隣」が最も高く、次いで「真正面」「はす向かい」となった。感染者の隣に座る人は、真正面に座る人より5倍、飛沫を受けるという。はす向かいに座る人は、真正面よりも飛沫が4分の1に抑えられた。
会社の会議室などを使って実施する「テークアウト忘年会」や自宅での「オンライン忘年会」も、一つの手段とする声がある。例年と異なる新型コロナ禍での年末年始。県は「11日までが集中期間の第一段でこれから第二段になる。改めて年末年始の注意喚起をする予定だ」と話し、週末に向けて新たな感染拡大防止を呼び掛ける考えだ。(阪口彩子)
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