「また先が見えなくなった」…沖縄県内の観光業、繁忙期を目前に再び苦境 GoTo全国停止


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 菅義偉首相が年末年始に「Go To トラベル」を全国で停止することを発表し、冬場の繁忙期を目前にした沖縄県内の観光関連事業者は「また先が見えなくなった」と死活問題として訴えた。リゾートホテルを中心に、県内ホテルの年末年始の予約は満室が続いている。ホテル関係者は「旅行自粛のメッセージとして受け取られ、再び人の動きが止まる」と頭を抱えた。

 県内の観光業はゴールデンウイークや夏休みに緊急事態宣言が直撃するなど、書き入れ時に需要を取り込めてこなかった。Go To トラベルの対象地域に東京が追加された10月以降、客足が少しずつ回復を見せていた。

 沖縄ツーリストの東良和会長は、観光業界にとって年末年始の旅行需要は非常に重要だとした上で、「医療を守る意味で理解はするが、これほど急な措置を講じるのなら、今入っている予約分については100%の補償があってしかるべきだ」と指摘した。

 医療体制が逼迫(ひっぱく)しているが、観光や飲食業も需要が「蒸発」している状況にあるとして、「経済は個人の生活を守るもので、いかに両立するかを考えるべきだ」と話した。

 恩納村や県内離島で展開する高級リゾートホテルでは、年末年始の予約のほぼ全てがGo To トラベルの利用者だ。高価格帯のホテルは割引額が高くなるためキャンペーンの利用が旺盛で、高い客室稼働率の日が続いていた。

 Go To トラベルの一時停止について、同ホテルグループの関係者は「予約はほぼキャンセルになるのではないか。全国の観光業界に影響が出る。ホテルや旅行社だけでなく物流や運輸なども止まってしまう」と強い懸念を示した。

 回復の動きが鈍かった那覇市内のシティーホテルも、年末年始は久しぶりに高稼働の見込みだ。市内のあるホテルは大みそかの予約が98%とほぼ満室だが、総支配人は「これで終わった。とどめを刺された」と悲鳴を上げた。

 延期になっていた修学旅行の再予約も入ってきていた。だが、全国の感染拡大などの影響で前週あたりから個人客、修学旅行ともにキャンセルが出始めている。残っている予約もキャンセルが続くと見込む。

 総支配人は「こちらはしっかり防疫体制を取っているが、(感染症関連の)数字に左右される。つぶれる事業者は出てくるだろう」と苦境を訴えた。

 ビジネス客を多く取り扱う国際旅行社では、年末は東京や大阪方面にあいさつ回りに行く企業の出張需要が高まるが、旅行控えの中で出張もキャンセルを見込む。與座嘉博社長は「35%の割り引きを見込んで販売していたツアー旅行商品もキャンセルとなるだろう」と肩を落とした。