沖縄の伝統料理「はんちゅみ」にほれ… 20年作り続け商品化、那覇市の石橋さん


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昔ながらのしょうゆ味と、オリジナルのみそ味、塩味をそろえた石橋桂子さんの「はんちゅみ」

 豚肉の肩と腕の中間部分に当たるグーヤーヌージと、かつお節を使った「肉でんぶ」のような料理「はんちゅみ」。伝統的な琉球料理でありながら、県民の間でも知る人が少なくなった料理にほれ込み、昔ながらの調理法と独自のアレンジを加えて20年以上作り続けているのが、石橋桂子さん(78)=那覇市=だ。できる限り県産の食材を使って丁寧に手作りし、9月には商品化した。石橋さんは「先人たちが手間をかけて作っていた料理を伝承していきたい。時代と共に進化させることで昔の人の知恵やおいしさを味わってもらいたい」と話している。(座波幸代)

  青森県出身の石橋さんがはんちゅみに出合ったのは、22年ほど前。宮城県仙台市で料理店を営んでいたころ、沖縄にいた次女から贈られた琉球料理の本がきっかけだった。素朴な写真になぜか心を引かれ、レシピを見て試行錯誤で作り始めた。

 1998年に沖縄に移住した。はんちゅみを知るきっかけとなった本の著者で「沖縄の食を考える会」を主宰する料理研究家・友利知子さんに、伝統的な調理法の直伝を受けた。長女の住むドイツや長男のいる米国に滞在した時も、孫の世話をしながら現地で手に入る食材を利用して作り続けた。

「はんちゅみ」作りや着物のリメークなど手仕事を楽しみながら「80歳になるのが楽しみ」と話す石橋桂子さん=那覇市安里

 石橋さんのはんちゅみ作りは、自宅近くの栄町市場でグーヤーの注文を入れるところから始まる。1・5センチ角にカットされた肉の筋や脂を丁寧に取り除く。1時間ほど湯がいた後は、筋肉質でうま味たっぷりの肉を特製のだしでコトコト気長に煮込む。

 味付けは、昔ながらのしょうゆ味と、オリジナルのみそ味、塩味の3種類。泡盛や島唐辛子、ピパーツなどの調味料にもこだわる。塩味はドイツの伝統料理をヒントに白ワインやスパイスを使い、クリームチーズとあえてクラッカーに乗せたり、サラダのトッピングにしたりなど、新しい楽しみ方も提案している。

 「沖縄では、豚肉は泣き声以外全部食べるといわれている。部位によってその良さを引き出す調理法があり、昔の人の知恵は本当に素晴らしい」と語る。

 はんちゅみ作りや編み物、着物のリメーク教室など、手仕事を楽しみ、毎日を過ごす石橋さん。「離婚して結構な苦労もしたけど、コロナ一色の世の中でも自分の生活を組み立て、ほとんどの日々を1人で穏やかに過ごせるのはありがたい、とつくづく思う」と話す。

 

 今秋、はんちゅみ販売のネットショップも始めた。来年はゴーヤー入りやカレー味の新商品も発売予定だ。「80歳になるのが楽しみ。それまでに次の世代にバトンタッチしたい。24時間が自分のもの。年を取るのも悪くない」と、新しい年を楽しみにしている。

 

 ネットショップはhttps://ishibashiya.stores.jp/