お母さんたちに寄り添い「充電できる場に」助産院オープン 産後ケアや一時預かり…幅広くサポート


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「助産院パピヨン」を開設し、母親たちに寄り添いたいと語る伊佐恵莉可さん(中央)とスタッフ=8日、宜野湾市我如古

 お母さんたちが、自分自身や子育てにポジティブに向き合えるようお手伝いしたい―。助産師の伊佐恵莉可さん(35)が9月、沖縄県宜野湾市の自宅に「助産院パピヨン」を開設した。12月から受け入れをスタートし、産前産後のケアを中心に「地域の親子のよりどころ」を目指している。

 伊佐さんが助産院を開設した背景には、自身のつらい出産経験や、病院などで勤務する中で感じたもどかしさがある。第1子の妊娠時に周囲に迷惑をかけまいと無理をして、妊娠高血圧症候群で切迫早産を経験した。当時看護師だった伊佐さんは「指導する側だったのに情けない。このままだと自分の専門性に自信を持てない」と県立看護大で学び、助産師資格を取得した。

「助産院パピヨン」の看板

 その後、県立八重山病院で助産師としての経験を積んでいたときに第3子となる長男を死産で失った。「これ以上ない悲しみを味わって『生きること』について深く考えるようになった。自分だから伝えられることもあるはず」と語る。

 さらに病院やクリニックでの勤務を経て「もっと妊産婦一人一人とじっくり向き合いたい」と感じるようになったという。入院中にネガティブになっている母親が気になっても、退院後はケアが途切れてしまう。若年出産や性被害に巻き込まれるケースも見てきた。「体の変化にうろたえ、さまざまな悩みを抱えているお母さんたちに寄り添いたい」と助産院の開設を決意。「理想や基準を押し付けずそれぞれの良さを伸ばし、育児を楽しむ手伝いをしたい」と意気込む。

 助産院には看護師として伊佐さんの妹の屋良満奈美さん(32)と学生時代から親交のある呉屋真弥さん(35)が勤務し、友人の與那覇真生さん(37)やネパール出身のサントス・カフレさん(34)らスタッフがサポートする。分娩(ぶんべん)は取り扱わないが、妊産婦の健康管理や心身のケア、母乳指導、乳児の一時預かり、思春期相談や性教育など幅広く行う。

 家族や地域とつながりがなく孤立する母親もいる。伊佐さんは「ちょっと眠りたい、パートナーとの関係や妊活を相談したいなど何でもいい。ここでガス抜きや充電をして、実家のように使ってほしい」と話す。詳しい診療内容や料金はホームページで。(電話)090(1949)4113。沖縄市とうるま市の「産後ケア事業」の委託を受けており、助成を利用できる場合がある。
 (大城周子)