「沖縄の戦い方」大きな相手にも手応え 名護・県勢2度目の16強 2013年<沖縄花園物語>


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ

 「ターンオーバーを狙える」。自陣から蹴り上げたハイパントにFW陣が駆け上がる。ハーフウエーでキャッチした相手に迷いのないタックルが決まるとボールを奪う。ここから巧みなパスで右へ左へとつなぎ続け、トライまで持ち込んだ。

 2013年12月27日。第93回全国高校大会の県勢の登場は開幕試合だった。3年ぶり出場の名護は浜松工(静岡)との初戦で、花園での沖縄県勢最多得点となる79点を挙げ勝利。次戦も突破して県勢2度目の16強入りを果たした。

名護―関商工 関商工の攻撃をタックルで押さえ込む名護の選手ら=2013年12月30日、東大阪市の近鉄花園ラグビー場

 登録メンバーの平均身長は170.2センチ。FW陣の中心メンバーだったフッカー伊佐太貴は「大きくもないし速さもない。抜きん出た選手はいなかった」という。特徴的だったのはFWがバックスラインに参加するなど、積極的にボールを動かし続けること。型にはまらないとも言える。メンバーに意識付いていた。

 1年生のころからタッチフットなどで相手を抜き去る楽しさを体感した。ステップにスワーブの個人技、クロスやループといった連係、飛ばしパスの判断などバックスの技術をFW陣も自然と学ぶ。これが徐々に実戦でも形になりだした。

 スクラム専門のイメージのあるフロントローも3次以降の攻撃ともなればライン参加する。バックスと混然一体。時にはしぶとく回し、時には縦を突いて、新たなポイントを固める。ブレークダウン(ボールの争奪局面)にも強い。花園初戦でもこうしてフェーズを重ね、ゲインを切っていった。

 攻撃を何次も重ねるのは当然に走力が求められる。このプレースタイルを貫徹するため、走り込みを徹底。ハードな練習前後のランニングを日課に朝練では駅伝部の練習に参加した。

 2回戦は一転、守りから相手を攻略した。ゴールラインを背に関商工(岐阜)の波状攻撃を約5分間、耐え抜き、奪ったボールを渡口大貴が自陣から50メートル独走しラストパスを永野将也に送ってトライを奪った。

 攻守のそれぞれの持ち味を発揮して3回戦へ。この大会で優勝するAシードの東海大仰星と当たった。屈強さや戦略、全てが別格だった。結果は0―63。タックルに入っても体勢を残され、オフロードでつながれる。ブレークダウンも上手だった。

 選手らが大きな差を感じた一方、辺土名斉朝監督(現コザ監督)は試合後に仰星の監督から「簡単に抜けると思った。苦戦した」と打ち明けられた。点差には表れてこない、チームを率いて実戦で相まみえた者だけが抱く感覚だろう。辺土名は「沖縄の子どもたちは俊敏性やクイックネスがある。大きな相手にも渡り合える」と感じたという。

第93回大会で県勢2度目となる16強入りを成し遂げた名護の選手たち=2013年12月

 現在、県内ではコザに続き、名護、さらには那覇でもスクールが定期開校され、幼少期からラグビーに親しむ機会が増えており、競技人口の増加に期待がかかる。

 初出場から40年。これまで各世代がつないだ経験に新たな知見を導入しつつ、現役高校生が今後も全国に挑み続ける。これまでと同様、花園を逃して涙も流されよう。強者と敗者、それぞれのドラマをつむいで、沖縄花園物語は書き継がれていく。
(謝花史哲)