譲渡可能な犬猫の殺処分「ゼロ」へ 沖縄県、2030年度目標 譲渡拠点も整備計画


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 県が近くまとめる新たな動物愛護管理推進計画で、県動物愛護管理センター(南城市)などが引き取った犬や猫のうち、譲渡が可能な犬猫の殺処分を2030年度までにゼロとする目標を設定する方向で調整している。玉城デニー知事は2018年の知事選で犬猫の殺処分を「ゼロから廃止」にすることを掲げた。しかし攻撃性の高さや病気などで、譲渡に適さない犬や猫も一定数いることから、計画で「廃止」は見送る公算となっている。

 環境省は昨春、犬猫の殺処分の基本方針を7年ぶりに改正した。殺処分に関しては(1)治癒の見込みがない病気や攻撃性があるなどの理由で譲渡が適切でない(2)引き取り後の死亡(3)その他の処分―に初めて3分類した。(3)に該当する犬猫は新たな飼い主への譲渡を強化し、殺処分数を18年度比で約半分の約2万頭以内にする方針を示す。

 県はこれを踏まえて新たな動物愛護管理推進計画を策定しており、(3)の譲渡可能な犬猫に関して殺処分を「ゼロ」とする方針だ。一方、残りの犬猫は引き続き殺処分を容認することになる。玉城知事が掲げた殺処分「廃止」との整合性もある中、県は「海外では譲渡に適さない犬や猫は殺処分数から除外するといった事例もある」(環境部)などとして、取り扱いを検討してきた。

 動物愛護管理センターで保護された犬の中には、人間への不信感から極度になつかず、近づくとかみつこうとする個体もいるという。譲渡できるかどうかが殺処分「廃止」に向けた課題となっている。次期計画では譲渡可能な犬猫の殺処分をゼロにすることを掲げる。基準年とする18年度に898頭だった殺処分数を、30年度までに全体で60%削減して360頭以下とする方針。

 県内の犬猫殺処分は19年度で643頭(18年度比29%減)で、暫定目標の1500頭以下を達成している。現行の動物愛護管理計画で基準年度とする04年度には1万4019頭に上っていたため、この間、殺処分数を大幅に減らした。県環境部は民間の動物愛護団体などと協力して譲渡会を開催するなど、譲渡に向けた取り組みを広げてきた結果だと説明する。

 今後は22年度までに、県動物愛護管理センターに隣接する旧県衛生環境研究所ハブ研究室跡地に「譲渡拠点」を整備する計画。引き取り手への譲渡が円滑に進むための健康管理やしつけなどを担う。

(島袋良太)