【深掘り】辺野古新基地設計変更 長引く審査の背景に何が? 最終判断は年度またぐ可能性も


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埋め立てや護岸工事が進められる新基地建設現場=2020年9月3日午後、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局が県に提出した設計変更申請の審査が続いている。玉城デニー知事は設計変更を認めない構えだが、審査が長期化して年度をまたぐ可能性も高い。政府は埋め立ての現場で大型船や台船を導入し作業を加速させようとしている。県は事前の協議がなく「一方的だ」として運用停止を求めており、新たな火種となった。 (明真南斗、西銘研志郎)

 県は2020年8月に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて独自の緊急事態宣言を出していたことを理由に、県民らに意見を募る手続きを延期した。だが、その後は間を空けずに必要な手続きを進めている。20年11月、名護市に意見を問い合わせ、同12月には防衛局に詳しい説明を求める文書を送った。

 ■回答待ち

 県関係者は「あまり時間をかけて、県の引き延ばし作戦だと言われても困る」と語った。意図的に遅延したと指摘されると、司法闘争に発展した場合、不利に働く恐れがある。県としては滞りなく手続きを進めなければならない。

 ただ、防衛局への質問は16項目242問と多岐にわたり、回答期限は今月22日までだ。回答が不十分な点があれば、県が再質問をすることもでき、複数回やりとりを繰り返すとみられる。

 審査を担当する海岸防災課は、防衛局からの回答が得られ次第、県庁内の環境部や農林水産部からも意見を聞いて取りまとめる。県は審査に要する「標準処理期間」を163~223日と説明しているが、防衛局からの返答を待つ間の日数は計上していない。回答が長引くほど最終判断も後にずれ込む。

 名護市長の意見も県の最終判断時期を左右する。渡具知武豊市長は20年12月、「異議なし」とする市長意見を提案したが市議会は反対多数で否決した。渡具知市長は意見案を再提出しないとの見方が市議会では強いが、県は21年3月26日の期限まで回答を待つ方針だ。

 ■新たな火種

 新基地建設を巡り防衛局は昨年末、埋め立て現場の護岸で、申請時に予定していなかった大型船や台船を導入した。工事を加速させる狙いがある。防衛局の資料では、環境への悪影響が事前の想定内に収まるものの、現状より増すことが示唆されていた。環境負担の増加は、設計変更の審査に影響する可能性もある。

 元々、護岸を桟橋のように扱って資材を揚げることについて、県は当初の申請内容と異なると指摘し、やめるよう求めていた。18年に埋め立て承認を撤回した理由の一つにもなった。さらに護岸に台船を付けて改造した防衛局の姿勢に対し、県庁内でも憤る声が漏れた。

 「何も無理なことを求めている訳ではない。事業者として普通の対応をしてほしいと言っているだけだ」(県関係者)

 工法の変更について県と事前の話し合いはなかった。協議を申し入れてきたが防衛局が応じず、20年12月に台船などの運用を止めるよう求める行政指導文書を送った。

 防衛局の姿勢について玉城知事は「一方的だ。民間企業では考えられないことだ」と批判した。

 防衛局は今月7日、本紙の取材に「県との協議は必要ないと認識しており、引き続き工事を進める」と答えた。