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「子どもはまだ?」に固まった 「女性と沖縄」重ねて生きる意味…仲村未央県議<「女性力」の現実 政治と行政の今>2


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

written by 座波幸代

「あらゆる意思決定の場に女性がいなければいけない」と話す仲村未央県議=県議会

 「議員になって以来、どんなに朝早い仕事の日でも、出張の時も、一度たりとも朝食が準備されていなかったことはない。自分の妻はそうだった。だから、あなたもそうしなさい」

 男性の先輩議員の言葉に耳を疑った。

 新聞記者を経て、沖縄市議を2期務めた県議の仲村未央氏(48)は2008年、36歳で結婚。その年、県議選への初挑戦を控える中、議員活動をずっと激励してくれていた先輩議員からの言葉だった。求められる夫婦像や家族像、内助の功を説いたつもりなのだろう。とはいえ、男性議員の結婚には掛けないはずの言葉に、強い違和感を抱いた。

 同じ時期、女性の市町村議員におなかを触られ、「子どもはまだ?」と聞かれたことがある。ショックで体が固まった。善意なのか、意地悪で言っているのか、理解できなかった。誰にも言えずにいたが、ふとある時、女友達にこんなことがあったのと伝えた。彼女ははらはらと涙を流した。「実は不妊治療中なの」。そう打ち明けてくれた。

 「仕事もバリバリ頑張れ」「夫の朝食は1日も休みなく作るのが当然」「結婚したらすぐに子どもをつくらないと」。女性を追い詰める固定的役割の観念や、「あるべき姿」の単一的な価値観を反映して政策が作られていくと、女性にとって非常に生きづらく、負担の大きな社会になる。そう懸念する。

 「自分自身は女性・男性こだわらず生きてきた」と話す仲村氏。だが、男性議員には向けないであろう視点や発言を投げ掛けられることは日常的にある。

 「議員だからではなく、女性を取り巻く状況として、年齢や結婚などに関わるタイミングで傷つけられることは多い。いろいろな女性たちが、悔しく悲しく感じながら乗り越えてきた現実」だと思う。

 「仕事も、家庭も完璧であれ」「家庭を優先するのか、仕事を取るのか」。そう迫られるのは女性にとっても、男性にとっても苦しいこと。出産、育児などで女性を立ち往生させるのではなく、「キャリアが途絶えることがなく、続けられるバランスや許容される労働環境を整えていくのが議員の仕事だと思う。いろんな人たちが多様な生き方を展開でき、支え合える社会を目指したい」と話す。

 政治の世界に導いたのは、5年間の新聞記者生活だ。大田県政の取材を通して「人権と自治のとりでとなる地方自治体の姿」に気付かされ、沖縄市や北谷町という「基地の街」で、人権や自由や幸福の追求が米軍基地に阻まれる不条理を見た。その課題解決に主体的に動いてみたい。ゼロから政治の世界へ飛び込んだ。

 市議、県議として政治に携わってきた中で「女性であること、沖縄に暮らす者であること、私は二つを重ねて生きていると思う」と振り返る。

 「多数の側ではなく、少ない側、社会的に弱い側の声に気付くという視点は、女性であることと同時に、沖縄に生きる人間であるからこそ、育てられ、研ぎ澄まされた」

 「女性活躍」「女性進出」が叫ばれながら変わらない現状。「政治や行政がメッセージを送る時、制度を伴って改善していかないと実感できない。『頑張れ、頑張れ』と言われても、これだけ圧倒的な賃金格差があり、沖縄の女性の非正規雇用率は60%に上る。具体的に改善しないと頑張れない。それを変えていけるのが政治や行政だ」。そう考えている。 


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