大城美佐子、芸道60年「ウタサーだから思う歌うたう」 若手や大御所10組と歌「島思い〜十番勝負」発表 


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芸道60周年の節目に新アルバム「島思い〜十番勝負」を発表した大城美佐子=那覇市の琉球新報社

 ベテラン民謡唄者の大城美佐子がこのほど、新たなアルバム「島思い〜十番勝負」を発表した。芸道60周年を記念し、若手から大御所までゆかりのある10組の唄者・ミュージシャンと共演している。「これが最後のアルバムになるかもしれないと思い、頑張った」と充実感をにじませる。

 大城は1936年、大阪市大正区生まれ、名護市辺野古育ち。20歳ごろから琉球古典音楽野村流や舞踊を習った。その後、民謡の道に進み、知名定男の父・定繁に弟子入り。62年にシングル「片思い」でデビューした。若手時代のピンと張った細い高音は「絹糸の声」と評された。現在は酸いも甘いもかみ分けたような味わい深い歌声が魅力だ。

 60年の芸道を「よくここまで来たな」と振り返る大城。20代後半には歌をやめようと思い県外へ出たが、「気が付けば三線を持っている自分がいた」。沖縄に戻った後、70年代から嘉手苅林昌とのコンビでも活躍した。「前から嘉手苅さんのファンで追っかけをしていた。初めて歌を聴いた時は体が震えた」

 「島思い−」は7月5日に発売された。参加者のうち、定男、徳原清文以外とコンビ唄をレコーディングしたのは初めてという。曲は相手の希望で決めた。

新アルバム「島思い〜十番勝負」のジャケット

 大城が注目する20代の若手、喜友名朝樹とは「軍人節〜熊本節」を歌っている。喜友名は大城と嘉手苅が歌うこの曲を聴いて「習いたい」と頼んだという。大城は「声が嘉手苅さんに似ている」と期待を寄せる。

 元THE BOOMの宮沢和史と歌ったのは「でいごの花」。宮沢について「努力家で沖縄が好き。素敵よ」と語る。「弟みたいな存在」という定男とは「夜半参り(やはんめー)」で年輪を重ねた歌を聴かせている。

 代表曲「片思い」をDJユニット「Churashima Navigator(チュラシマ・ナビゲーター)」がリミックスした変わり種もある。大城は「面白いね。(この曲は)弟子やいろんな人に譲っているし、歌はみんなのもの」と懐の深さを見せる。そのほか、前川守賢、安里勇、ネーネーズらそうそうたる面々が顔を並べる。ボーナストラックとして原曲の「片思い」も収録している。

 80歳を超えても活動は盛ん。今後について「自分はウタサー(唄者)だから自分が思う歌を歌えればいい。旅が好きだから(県外公演の)オファーがあれば飛んで行く。いろんな所に行けたらいい」と肩肘張らずに語った。

 「島思い−」は税抜き2800円。タフビーツから発売。