菅首相に大きな打撃 沖縄知事選の「前哨戦」で敗北 次期衆院選に影響も<市政刷新の内幕 宮古島市長選>(下)


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written by 知念征尚、吉田健一

 「今、何が悪かったと言ってみたところで始まらない。大いに反省の上に立って、次回、名誉挽回のために党はしっかり闘う」。宮古島市長選から一夜明けた18日、二階俊博自民党幹事長は党本部で開いた記者会見で言葉少なめに語った。強固な保守地盤とされる宮古島。東京からも人員を送り込み、党として力を入れて臨んだ結果の敗北に政府与党内では衝撃が走った。年内に行われる衆院選や来年秋の県知事選への影響を懸念する声も出始めている。

開票結果を待つ下地敏彦陣営の関係者ら=17日、宮古島市平良

 選挙戦が実質的に始まっていた昨年12月の暮れ、現職の下地敏彦氏の電話が鳴った。相手は菅義偉首相。来年秋の知事選の“前哨戦”と位置付け「頑張ってほしい」と下地氏を激励した。市長選は一自治体の首長選挙という枠を超え、菅氏が奪還に執念を燃やす「県知事選に向けた初戦」との位置付けを鮮明にしていった。

 官房長官時代から沖縄政策に深く関わる菅氏にとって、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設といった国の施策に反対する玉城デニー知事の存在は目の上のたんこぶ。下地氏は、県政を支える「オール沖縄」勢力に対抗する保守系首長でつくる「チーム沖縄」の会長でもあり、県政奪還に向けて落とせないポストを担っていた。

 一方、4期目に臨む下地氏は多選批判に加え、在職中の不祥事も重なり自民県連からは「現職不人気」もささやかれた。東京からは菅首相の秘書や党職員2人のほか、小野寺五典元防衛相や鈴木宗男参院議員ら大物議員も相次いで宮古島入りした。保守地盤の宮古島ということもあり、「勝てる」(自民党関係者)とみられていた選挙の敗北に「首相にとって打撃だ」(政府関係者)と驚きの声が広がった。

 自民党内で懸念されているのが年内に実施される次期衆院選への影響だ。前回衆院選で自民党が沖縄選挙区で議席を獲得したのは、宮古島市を含む4区の西銘恒三郎氏のみ。西銘氏は前回衆院選で、「オール沖縄」勢力が支援した仲里利信氏に宮古島市で8千票余りの差を付けたために、本島南部地区での劣勢を押し返して勝利につなげた経緯がある。

 一方、宮古島市長選で勢いに乗る「オール沖縄」勢力も不安材料を抱える。4区から出馬を予定する元那覇市議会議長の金城徹氏は故翁長雄志前知事と共に元自民党議員として「オール沖縄」内で保守中道にウイングを広げる顔役を担ってきた。衆院選に向けて昨年11月、国政野党第1党の立憲民主党に公認申請した。公認が得られるかは現時点で未定だが、「オール沖縄」内には、4区は「無所属であるべきだ」との考えは根強く、金城氏が立民公認となった場合は反発も予想される。