【記者解説】経営体力強化狙う 低金利長期化、人口減受け 琉銀・沖銀業務提携


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 沖縄銀行と琉球銀行の包括業務提携は、競合しない分野で業務効率化やコスト削減に取り組み、新型コロナウイルスで影響を受けた事業者支援などに注力する銀行の経営体力を高める狙いがある。超低金利政策の長期化や異業種の金融分野への進出など、地銀を巡る厳しい収益環境が続く中で現状を打開したいという思惑が一致し、ライバル行同士の異例ともいえる協調が実現した。

 両行によると、事務効率化に向けた話し合いは2019年から、沖縄海邦銀行を含めた3行で始めていた。関係者によると、営業規模が異なる第二地銀の海銀とは、現金輸送や現金自動預払機(ATM)の共同化に伴う負担金などで折り合いが付かず、合意が実現しなかった。

 感染症の影響が拡大する中、事業者支援を急ごうと昨年12月に沖銀が琉銀側に持ち掛け、業務提携の議論が加速した。

 両行は、今回の業務提携を足掛かりとした将来的な経営統合や資本提携の強化を完全否定している。

 ただ、菅政権下で地銀の統合を推進する政策が一気に進んでおり、業務提携の発表に「統合への一歩ではないか」との観測も県内経済界にはある。

 同一地域内の地銀が合併して寡占状態となっても、独占禁止法を適用しないという特例法が昨年11月に施行された。日銀も政府と歩調を合わせ、統合に踏み切る地銀に対し、日銀が預かる当座預金の残高に年0・1%の上乗せ金利を支払う政策を発表している。

 沖銀、琉銀ともに自己資本比率は目安とされる8%を超える。人口減少など地域経済の空洞化に悩まされる他県の地銀と比較しても、経営は安定している。一方、沖縄も将来的に人口減少局面が訪れ、インターネットバンキングやフィンテック企業の台頭によって、県内地銀の収益の先細りも予想される。

 両行の頭取は業務連携の先に、シンジケートローンや事業承継(M&A)など、事業分野での連携も模索する考えを示した。今後、両行で具体的な連携内容の中身を詰めるとしており、効果などは未知数の部分もある。

 一方で、「経済の血液」とも言える金融をつかさどるライバル行の協調路線は、他業種にも業界再編の影響を広げる可能性がある。 (池田哲平)