【記者解説】辺野古サンゴ訴訟、農水相の是正指示「違法ではない」の判断にはらむ危険性


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新基地建設へ着々と埋め立てが進む辺野古沿岸部=1月19日、名護市の米軍キャンプ・シュワブ(小型無人機で撮影)

 3日の福岡高裁那覇支部の判決は、農林水産相の是正指示を違法ではないと判断した。県が申請を許可しなかったことについては違法状態だと指摘し、「許可するよう求める必要があった」と示した。国の機関が審査内容に干渉することを容認したと言える。

 沖縄防衛局によるサンゴ類の移植申請に対して県知事が判断する前に、農相の是正指示は「許可せよ」と命じるものだ。県が長らく判断を示さないのが問題なら、単に判断を急がせるという選択肢もあった。促すだけにとどまらず、許可を命じる国に対し、県側は「知事の判断権限を奪う」と反発を強めた。

 提訴前、県は国の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」に審査を仰いだ。係争委は、県が求めた指示内容の問題点には深く立ち入らずに、農相の指示内容は適法だと判断した。今回の判決は係争委と比べ、より踏み込んだ内容だと言える。

 地方自治法は、国と地方自治体の関係を対等と位置付け、地方に対する国の関与は最小限でなければならないとしている。農相の是正指示のような関与の手法が許されれば、今後、地方自治体の事務でも中央の意向を色濃く反映させることが可能となる。今回の判決は、地方自治の理念を揺るがす危険性をはらんでいる。
 (前森智香子)