【記者解説】那覇軍港移設、3者協議の行方は不透明 浦添市長選・松本氏3選 民港部埋め立て縮小主張


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当選の弁を述べる松本哲治氏=7日午後11時10分ごろ、浦添市伊祖の選挙事務所

 那覇軍港移設について現行計画を基本的に受け入れる姿勢を示した松本哲治氏が2期8年の現職の強みを発揮し、市政刷新を訴えた新人の前浦添市議・伊礼悠記氏との一騎打ちを制した。前々回は「反対」、前回は軍港位置をふ頭の南側とする「浦添案」を掲げた松本氏は、いずれも当選後に公約を撤回し、現行計画の受け入れを表明。移設の是非が問われた選挙だったが、「市長も限界がある。苦渋の決断をした」との同氏の説明が一定の信任を得たことになる。

 ただ軍港移設に関連する港湾計画は10~15年ほど先を見据えて策定される予定で、軍港の正式な位置なども決まっていない。軍港との隣接で有用性が高まるはずだった牧港補給地区は2025年度以降に返還されることが決まっており、遊休化が指摘される那覇軍港の移設の必要性が改めて問われそうだ。

 一方、伊礼氏は「移設中止」を掲げたものの、日米両政府だけでなく県や那覇市が積み上げてきた計画を撤回させるための具体策を提示しなかった。「現実的判断」を強調した松本氏の説明が市民に浸透したほか、市民は新型コロナウイルス対策を含む経済政策、福祉政策を重視した可能性がある。

 松本氏は、浦添市への移設を容認する玉城デニー知事や城間幹子那覇市長との「地元合意」を強調するが、玉城知事は伊礼氏を支援した。軍港移設に伴う西海岸開発を巡り、松本氏は「地元合意をベースに再協議」を明言。117ヘクタールの民港部分の埋め立て面積の縮小を主張する構えだが、協議の先行きは不透明だ。

 一方、本紙の出口調査では重視する政策に「新型コロナウイルス対策」を挙げる有権者も多かった。プレミアム商品券などによる地域経済全体の波及効果を期待する松本氏だが、直接現金給付など支援拡充を求める声も大きく、市民目線の迅速な対策を講じられるかが今後、問われる。 
 (松堂秀樹)