軍港問題で「オール沖縄」構築できず 知事の応援演説も逆効果<現職大勝の波紋・浦添市長選>上


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浦添市長選で伊礼悠記氏(左)の応援演説に立つ玉城デニー知事=3日、浦添市内

 7日に投開票された浦添市長選は、自民、公明両党が推す現職の松本哲治氏が新人の伊礼悠記氏を大差で破り3選を決めた。両陣営の舞台裏や再選の波紋を探った。

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 「悠記さんに力を貸してください」。浦添市長選真っただ中の2月3日、玉城デニー知事は伊礼悠記氏とそろって街頭に立ち、支持を訴えた。「女性初」「史上最年少」市長の誕生に向け、那覇軍港移設「反対」を前面に出した伊礼陣営。「建白書」の実現を一致点に応援に踏み切った知事の決断とは裏腹に軍港移設を巡る与党内の意見の相違により「オール沖縄」態勢を構築できなかった。

 街頭演説で知事は軍港問題に触れることはなかったが、移設を「容認」する知事の応援演説は波紋を広げ、相手陣営に攻撃材料を与える結果となった。

 市政奪還に向け軍港移設に反対する社民、共産、社大の3党は9月4日から候補者選考を開始、10月中旬には無党派層を取り込める候補として伊礼氏擁立を念頭に協議を重ねていた。
 しかし、伊礼氏出馬で党勢拡大を期待した共産が党籍を残す方針を示したことで、社民、社大は反発し、協議は決裂した。時間だけが過ぎる中、市民団体からも伊礼氏擁立の声が高まり、最終的には3党合意を出馬の条件にした伊礼氏の要求を共産がのんだが、出馬表明は12月23日までずれ込んだ。

 党籍問題は解決したものの、課題は山積していた。伊礼氏は党の活動方針により、市議時代は安波茶など市東部地域を政治活動の拠点にしていたため西部地域での知名度は低かった。

 また、候補者を支える政党も、それぞれの「お家事情」で万全な支援態勢を組めなかった。社民は立憲民主への合流を巡り分裂が決まったばかり。立憲民主は市議選で候補者を擁立したものの、支持者との兼ね合いで市長選とのセット戦術ができなかった。共産は市議選での候補者変更を背景に結束が揺らいでいた。

 軍港移設を容認している、浦添市選出の赤嶺昇県議会議長と、同氏に近い市政野党の市議選候補者も伊礼氏と距離を置いた。結果、32人の市議選候補で伊礼氏支持を明確にしたのは5人のみで、19人の市議選候補とセット戦術を展開した松本陣営と比べて相乗効果は限定的だった。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う県独自の緊急事態宣言も影響した。選挙戦の出遅れをばん回しようと伊礼氏は街頭演説に重きを置き、毎日30カ所以上でスポット演説をこなしたが、松本氏に追い付くことはできなかった。

 来年の知事選や次期衆院選の前哨戦に位置付けられた浦添市長選では、「オール沖縄」のアキレス腱とされてきた軍港問題が正面から突き付けられた。4月にうるま市長選を控える中、「オール沖縄」のリーダーとして、玉城知事の求心力が問われそうだ。

('21浦添市長選取材班)