久米島で波力発電実証へ 音力発電社 23年実用化目指す


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音力発電(神奈川県)が、波力発電の遠隔監視の実証実験で設置した小型の波力発電機=5日、久米島町の具志川漁港(糺の森提供)

 再生可能エネルギー装置の開発を手掛ける音力発電(神奈川県、速水浩平代表)が、海の波の力を利用した新たな発電システム「循環型波力揚水発電」の開発に取り組んでいる。2022年夏に久米島町で発電機の実証実験を開始し、早ければ23年の実用化を目指している。

 音力発電が開発している循環型波力揚水発電機は、波の力を利用して、空気圧で装置内のタンクにある特殊な液体を上部に押し上げる。液体が落下する際に発電機を回して発電する。50センチ程度の低い波でも十分に液体をくみ上げられ、高効率で安定的な発電が可能という。

 発電機は、水深5メートル以上ある、港や防波堤など陸地と隣接した場所に設置する。大きさや発電能力は複数のパターンを開発していく予定だが、現在の想定は縦20メートル、横30メートルの台形の装置を係留し、中に高さ20メートルの発電機本体を設置する。

 一般的な波力発電には(1)台風時などの高波対策(2)フジツボなど海洋生物の付着対策(3)設置場所を巡り漁場や航路との調整―という課題がある。

 同社の発電システムは造船会社が設計を担当し、「100年に1度のレベルの高波でも耐えられる」(速水代表)性能という。発電機を回す際に海水をくみ上げないため、装置内に海洋生物が付着することを防止できる。沖合に設置するタイプの発電機だと漁場などとの調整が難航することもあるが、陸地隣接型のため立地の選定が容易になると期待される。

 速水代表は「波力は太陽光や風力に比べてエネルギー密度が高く、日本の地域特性にも適している。日本は海洋国家で、純国産エネルギーとして波力を活用しない手はない」と話した。久米島町をはじめ、全国5カ所程度で実証実験をする予定で候補地を探している。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業を受託し、発電技術の研究開発を進めている。並行して、発電装置の遠隔監視技術の研究開発についての総務省事業と、離島での波力発電稼働に向けた国交省事業を受託している。

 5、6の両日には、久米島町の具志川漁港で遠隔監視の実証実験を行い、1・4キロ離れた陸上の受信機に電圧や振動、気温のデータを送信できることを確認した。