亡き家族と1枚の絵に 遺族の心に寄り添う似顔絵を描くアーティストの思い


社会
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 【沖縄】「グリーフケア」として、故人と遺族を1枚の絵に描き、遺族の思いをかなえる似顔絵展が、沖縄市中央のアートギャラリーsoranoeで開催されている。企画したのは、ドライフラワーと似顔絵のギフト専門店「ゑんぴつ堂」(宜野湾市)代表でアーティストの朝日さん。「絵が大切な方との死別に苦しむ遺族の心に、温かな変化を生み出すきっかけになればいい」と語る。21日まで。

中村昌靖さん(左)の家族の似顔絵を描いた朝日さん=19日、沖縄市中央

 グリーフケアは、身近な人と死別した人が悲しみから立ち直れるようそばにいて支援すること。

 朝日さんは2011年にゑんぴつ堂を立ち上げ、還暦祝いやウエディングなど贈答用の絵画を手掛けてきた。ある時、亡くなった家族を一緒に描いてほしいという依頼が舞い込んできた。当初は戸惑ったというが、「絵は大切な人が亡くなった後にも増やすことができる思い出、宝物だと気付いた」。より遺族の思いに寄り添いたいと、グリーフケアアドバイザーの資格も取得した。依頼者から預かった大切な人の写真を基に、特徴や思い出話を丁寧に聞き取り、世界に一つだけの似顔絵を仕上げていく。

 中村昌靖さんは、心疾患により生後7カ月で亡くなった次男・匠ちゃんを囲んだ家族5人の似顔絵を朝日さんに描いてもらった。匠ちゃんについて話すことで悲しみがよみがえることを恐れたが、完成した絵を見て「胸が熱くなり、温かな涙がこみ上げてきた」。中村さんは「大切な存在を失った傷は決して癒えることはないが、傷と共に生きていこうと勇気をもらえた」と声を振り絞った。

 展示会は正午~午後5時まで。入場無料。