【本部】本部町にある広域通信制の八洲学園大学国際高校の卒業式が21日、同校で開かれた。18歳から79歳までの卒業生388人が卒業証書を受け取り、新たな一歩を踏み出した。中村成希校長が「高校で培った力で、困難に打ち勝ってほしい」と激励した。卒業生の中には、79歳で学び直した男性、高校中退後、同校に編入し、亡き曽祖母との約束通り卒業の日を迎えた女性など、背景の異なる同級生が共に卒業を祝った。また同校OBでラッパー「OZworld」として活躍する奥間玲央さん(23)も参列し、歌で門出に花を添えた。 (岩切美穂)
◆最高齢79歳、溝田武良さん 有意義な時間、宝物
八洲学園大学国際高校で卒業を迎えた溝田武良さん(79)=本部町=は、2000年の同校開校以来最高齢の卒業生となった。「いつか通いたい」と望みながらも「縁が無い」と半ば諦めていた高校卒業の夢を、80歳を目前に達成した。
溝田さんは広島県出身。中学卒業後、鉄工所などで勤務。航空自衛官を経て埼玉県の土木建築の会社に長年務めた。15年前、本部町に嫁いだ次女に息子が生まれたのを機に夫婦で移住。町内のホテルで働いていた5~6年前に同校を知り、「高卒資格を取ろう」と一念発起して入学した。
「若者に付いていけるかな」。不安の中スタートした高校生活。単位取得試験で不合格になった時は退学も考えたが、担任教諭らの励ましで追試を乗り切った。体育のグラウンドゴルフで、同級生を抑え優勝したことは楽しい思い出だ。
「有意義な時間を過ごせた。何にも変え難い宝物です」と周囲に感謝する溝田さん。「チャンスがあれば大学にも行ってみたいね」。晴れやかに笑った。
◆曽祖母との約束守る 昼間は仕事、上間琉杏さん
亡き曽祖母との約束「高校卒業」を果たそうと、仕事と二足のわらじで学業に取り組んだ上間琉杏さん(18)=今帰仁村=は、念願の卒業証書を手に「おばあちゃん、約束守ったよ」と喜びをかみしめた。
中学では「勉強に身が入らず遊び回っていた」という上間さん。中学2年のある日、曽祖母・古堅由記子さんの肩をもんでいると「高校は卒業しなさい。約束よ」と言葉を掛けられた。「えー」。自信が無く即答できなかったが、その後も会うたびに諭された。同年、由記子さんは体調を崩し92歳で他界した。
由記子さんの言葉を胸に名護市内の高校に進んだが、環境になじめず半年で退学。翌年、八洲学園に編入した。昨年からは保育士補助の仕事を始め、昼間働き夜に課題をこなす日々。勉強が頭に入らない時は、先生にすぐ質問した。「勉強は苦手。分からない事を放置しないよう心掛けた」。
かわいがってくれた曽祖母の思いに応えた上間さん。「専門学校に行って保育士になりたい」と前を見据えた。